日本IBMは2009年5月21日、RDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)の新版「DB2 9.7」を発表した。オラクル製のDBMSで動くアプリケーションをDB2に移植しやすくすると共に、データベースサーバーのリソース使用効率を高めるデータ圧縮機能も強化した。ランニングコストの安さを売り物に、オラクル製品からの乗り換え需要を喚起する考えだ。
データベース処理でPL/SQLに対応
DB2 9.7の機能強化で特に目を引くのは、データベース処理にデータベース言語の「PL/SQL」を使えるようにしたこと。DB2は従来から、低コスト、信頼性、使いやすさ、先進的なテクノロジーの4つの特徴をうたう。特に運用管理の自動化が運用コスト削減に貢献し、またデータ圧縮機能が高いことから、ストレージや電力などのコスト削減が可能である。しかしながら、データベース言語が各社によって異なるため、システム改修時に簡単に他のデータベース管理製品からDB2に移行することは不可能だった。
DB2 9.7は、PL/SQLに対応し、DB2に移行する場合に、修正を行うことなく実施することができるようになった。これにより、移行にあたっての開発期間の削減と、データの保管スペースや光熱費を含むコストを最大75%削減できる。
PL/SQLは、オラクル製のDBMSへのデータ格納や検索、更新などの処理を記述するプログラミング言語である。DB2 9.7ではOracleを使って開発した既存のアプリケーションを改修することなく、DB2 9.7に移植できるようになった。
DB2 9.7ではデータ圧縮機能も強化した。具体的には、複数の階層にわたる検索用のインデックスを圧縮する。検索や書き込み処理の過程で一時的に作成する「テンポラリテーブル(一時テーブル)」を圧縮する機能も備える。これらの圧縮機能によって、使用するディスク領域を40%程度少なくできるケースもある。
保守性や操作性も高めた。保守性に関しては、データベースを止めずにスキーマを変更したり、新規作成したテーブルにデータを移行したりする機能を実装。操作性については、データ処理の高速化に用いるパーティションの再編成や、データのアーカイブを高速に実行できるようにした。
日本IBMは、DB2 9.7を使うことでDBMSのランニングコストも安価にできるという。ソフトウェアのライセンス料や年間の保守料金などを含むDB2のランニングコストは、5年間で合計813万9800円(最上位版を1プロセサで動作させた場合)。日本オラクルの「Oracle 11g Enterprise Edition」に比べて約半分にできると、日本IBMは試算している(表)。
DB2 Enterprise Server Edition |
Oracle 11g Enterprise Edition |
|
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基本ライセンス (1プロセサ) |
461万7000円 | 516万3000円 |
高可用オプション (1プロセサ) |
(ライセンスに含む) | 63万400円 (Active Data Guard) |
パーティショニング | (ライセンスに含む) | 125万円(Partitioning) |
監理ツール | (ライセンスに含む) | 38万400円(Diagnostics Pack) |
チューニングツール | (ライセンスに含む) | 38万400円(Tuning Pack) |
初年度保守料 | (ライセンスに含む) | 171万6924円 |
ライセンス+1年目の保守料 | 461万7000円 | 952万1124円 |
2年目から5年目の保守料 | 88万700円/年 | 171万6924円/年 |
1プロセサで5年間運用した場合のコスト | 813万9800円 | 1638万8820円 |
データベースサーバーで使用するメモリー容量に応じて、3種類の製品ラインナップを用意した。価格は、使用するメモリーが4GBまでの「Express Edition」が61万8500円、16GBまでの「Workgroup Server Edition」が143万7000円、メモリー容量の上限を定めない「Enterprise Server Edition」が461万7000円。製品の出荷は2009年8月28日からだが、6月19日からダウンロード販売を開始した。