[新製品・サービス]
RAG対応の分散型データベース「SingleStore」、日本で提供開始
2025年8月5日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)
SingleStore Japanは2025年8月5日、MySQL互換の分散型データベース「SingleStore」を提供開始した。RAG(検索拡張生成)構成のAIアプリケーションで大量のリクエストを処理するケースに向くとしている。ノードの追加によって容量と性能が向上し、カラムストアで大量データの分析(OLAP)を高速に処理すると同時に、インメモリーで行データの追加・更新(OLTP)を高速に処理する。また、ベクトルデータベース機能と文字列の全文検索機能を備えている。
SingleStore Japanの「SingleStore」(旧称:MemSQL)は、MySQL互換の分散型データベースである。
ノードの追加によって容量と性能が向上する水平分散型アーキテクチャを備えている。SQLのクエリーを受けるアグリゲーター層、インメモリー動作でデータを処理・保存するリーフ層、永続ストレージ層の3層で構成し、それぞれを独立して拡張可能である(図1)。

拡大画像表示
米SingleStoreのCEO、ラジ・ヴェルマ(Raj Verma)氏(写真1)は、「AIに取り組んでいる企業は多いが、具体的な成果を出している企業は少ない」と指摘。SingleStoreが向く用途の1つに、RAG(検索拡張生成)のデータベースなどAIアプリケーションを挙げている。
「AIエージェントは(人間のような)疲れを知らないので、データベースに対して頻繁にアクセスする。データベース側には、多数のAIエージェントから同時に大量のリクエストを受けても、短時間でこれに応答可能な性能が求められる」(ヴェルマ氏)

拡大画像表示
性能を拡張しやすい水平分散型のアーキテクチャであるのに加え、RAGデータベースに向いたベクトル検索/全文検索機能を備えていることや、データの追加・更新を高速に処理できることからAIの用途に向いている、とヴェルマ氏は説明。「実際、AI用途のユーザーは多く、SingleStoreユーザーの26%がベクトル検索を活用している」(同氏)。
SingleStoreは、OLAP(大量データ分析)とOLTP(トランザクション処理)を両立させている。標準ではOLAPに向くカラムストア型のデータベースとして動作し、データをストレージに保存する。これと同時にインメモリーで動作するローストアを併設しており、単一行の挿入・更新などのOLTPを高速に処理する。新しいデータはローストアに書き込み、定期的にカラムストアにマージする。
ベクトル検索/テキスト全文検索機能をデータベースに組み込んでいる。ベクトルデータは通常のテーブルに格納し、専用のSQL関数で検索する。ドット積による類似度やユークリッド距離など、各種のベクトル検索向けSQL関数を用意している。これにより、「価格帯で絞り込みつつ、類似の商品画像を検索する」といったSQLクエリーを発行できる。一方、テキスト全文検索エンジンはApache Luceneをベースにし、SQL関数からテキスト合致検索が可能である。
同社はこれまで日本オフィスを設けていなかった。2025年7月に日本法人のSingleStore Japanを登記し、今回、日本国内での製品提供に至った。ヴェルマ氏によると、米SingleStoreの売上の6割はFortune 500企業が占め、金融機関がアルゴリズム取引などに使っているという。国内では日本経済新聞社が日経電子版のデータ分析に用いている。また、米SAS Instituteのデータ分析プラットフォーム「SAS Viya」がSingleStoreを利用しているという。