[事例ニュース]

住友ゴム工業がNECとの共創で目指す「国際競争力のある研究開発基盤」

AI・データ駆動型のR&Dで日本の製造業を強くする

2025年11月28日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)

住友ゴム工業とNECが、2025年7月の戦略的パートナーシップ締結で掲げた 「世界で競争力のある研究開発基盤の構築」に向けた共創活動を進めている。2025年11月26日に開いた説明会で、共創で取り組んでいる内容、「配合レシピ設計期間の95%削減」や「材料探索期間の60~70%短縮」といったハイレベルな目標を掲げて臨んだ先行実証の成果などを紹介した。

事業会社とITベンダーが共創で目指していること

 タイヤ、スポーツ用品、産業品の3つの事業を柱とする住友ゴム工業。「ダンロップ」「ファルケン」「ゼクシオ」などのブランドを擁し、特にタイヤでは世界的なシェアを持つ。また、タイヤ事業で培ったゴム製造技術を生かして、制振ダンパーや医療用ゴム、介護用品など幅広い製品を国内外に提供している。

 そんな住友ゴムとNECの共創は、2022年11月、タイヤ開発における熟練技術者の技能継承におけるAI活用から始まった(関連記事住友ゴム工業とNEC、タイヤ開発における熟練設計者の匠ノウハウをAI化)。

 それから3年後の2025年7月には、住友ゴムの研究開発から製造・保守までの業務プロセス全体の変革を目指して共創が本格化した。NECによる技術支援のベースは「NEC先端技術コンサルティングサービス」として体系化されている。住友ゴムのように素材関係の製品開発を行う企業に対し、研究開発の初期段階からNECの研究者が伴走型でさまざまな課題解決を支援するサービスだ。

 NEC 執行役 Corporate EVP兼CTOの西原基夫氏(写真1)は、「あらゆる業界でAIを活用したプロセス改善が進む中で、ITシステムやテクノロジーを提供する側は、『システムを提供して終わり』というビジネススタイルを変えていく必要がある」と話した。AIについては、顧客のデータを安全に共有・管理したうえでAIモデルを改善し続けることで、顧客が取り組むイノベーションを支えていくという。

写真1:NEC 執行役 Corporate EVP兼CTOの西原基夫氏

「人とAIの協働」で競争優位を確保

 住友ゴム 常務執行役員の水野洋一氏(写真2)は、「グローバル競争の激化や労働人口減少により、研究開発の高度化・高速化は、競争優位性確保のために不可欠」という認識に示した。そのうえで同社は、NECとの「2つの共創軸」に取り組んでいる。

写真2:住友ゴム 常務執行役員の水野洋一氏

 1つ目は、「世界で競争優位となる研究開発基盤の構築」だ。材料探索・解析技術の高度化と同時に、労働人口減少などの社会課題に対応し、仕事のしかたそのものの変革を図るとした。2つ目は、「新たな価値創造に向けた技術・知財の融合」。住友ゴムの高機能ゴム技術とNECが各産業領域で培ったITを融合して、新たな事業機会の創出を目指す(図1)。

図1:2つの共創軸(出典:住友ゴム工業)
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 研究開発基盤については、市場投入までの迅速化、継続的なイノベーション創出と顧客価値創造、業務合理化の徹底、新たな付加価値分野の開拓といった目標を並べている。それらの具現化に向けて、「AIエージェントを含む次世代のAIに着手して、人とAIが相互に協働する環境を構築していく」(水野氏)とした。

●Next:住友ゴムの重点テーマを解決する「2つのコア技術」とは?

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