日本オラクルは2009年7月から8月にかけて、ERPからデータベースまで主要ソフト製品の新版を相次ぎ発表した。買収した製品群を単に体系化したという印象は薄く、機能拡張性の向上やオンライン処理の高速化など、総じて、既存システムが抱える問題点に焦点を当てた機能強化を施したと言える。
E-Business Suite(EBS)R12.1
財務会計やサプライチェーンマネジメント(SCM)などの機能を備えるERPの新版である。機能強化のポイントは大きく2つ。第1は人事管理で、採用・配置・育成・評価まで人材データを見える化し、人事施策を検証できるようにした。第2はSCMで、散在する販売拠点の需要情報を一元管理する機能や、設備稼働率などを考慮して生産プロセスを最適化する機能を追加した。
これらの機能強化も重要だが、ユーザー企業にとって特に魅力的なのは機能拡張のしやすさだろう。ERPは最新版にアップグレードしないと新機能を完全には使えない場合がある。しかしEBS R12.1では旧製品のEBS R12やEBS R11i.10を利用したまま、保守部品の需給計画や倉庫管理などR12.1の新機能の一部を単体で導入できる。
Fusion Middleware 11g
5種類の製品で構成するミドルウェア群。SOA(サービス指向アーキテクチャ)基盤「SOA Suite 11g」、ポータル基盤「WebCenter Suite 11g」、アプリケーションサーバー「WebLogic Suite 11g」、ID管理「Identity Management 11g」、開発ツール「Development Tools」からなる。
中でも目を引く新機能を備えるのはSOA Suiteだ。SOAは複数のサービスを組み合わせることでアプリケーションの機能拡張や変更がしすくなる反面、サービスの管理が煩雑になるという負の側面がある。だが「これまでサービスのガバナンスは見過ごされてきた」(米オラクルのテッド・ファレル シニアバイスプレジデント)。そこでSOA Suiteでは、全サービスの内容や連携状況を一元管理し、サービスレベルやセキュリティのポリシーを単一の管理画面から制御できるようにした。
In-Memory Database Cache 11g
データの検索や抽出などクエリー処理を高速化するインメモリー・リレーショナルデータベース(RDB)。オラクル製RDBに格納してあるテーブル全体や一部をアプリケーションサーバーのメモリー上にキャッシュしておくことで、クエリー処理時間のボトルネックになるDBサーバーへのアクセスやディスク処理を減らす。
新版では、PL/SQLで記述したデータ検索・抽出処理用のプログラムが実行可能になった。これによりオラクル製RDBで使用中の既存プログラムをほぼ無修正のまま高速化できるという。「ECシステムのように短いクエリーを大量に処理するオンラインシステムで特にメリットがある」(三澤智光常務執行役員)。
オラクル製RDBがなくても単体で稼働する「TimesTen In-Memory Database 11g」も同時に発表した。
製品名 | Oracle E-Business Suite R12.1 | Oracle Fusion Middleware 11g | Oracle In-Memory Database Cache 11g Oracle TimesTen In-Memory Database 11g |
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稼働環境 | Linux、AIX、Solaris、HP-UX、Windows | Linux、Windows | Linux、Solaris、Windows |
発表日(出荷時期) | 2009年7月15日(同日) | 2009年7月17日(9月8日) | 2009年8月4日(8月7日) |
価格 | 会計機能が最少ユーザー数5人で262万1850円〜など | SOA Sute 11gが656万2500円/プロセサ、または13万6920円/ユーザーなど | いずれも451万900円/プロセサ、初年度サポート料が99万2398円/プロセサ |