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グローバルERP導入の勘所—業務の標準化を徹底 各拠点の「手離れ」に知恵絞る

2010年1月13日(水)宿谷 俊夫

欧米企業の多くは、世界各国に展開するグループの全拠点に共通のグローバルERPを導入し活用している。海外拠点に対して強い統制をかけることに消極的だった日本企業においても近年、「ITをテコにグループ内のガバナンスを強化したい」という声が高まっている。本稿では、グローバルERPを導入する際のポイントを解説する。

 国内の景気回復が思うように進まず、企業にとって海外拠点の重要性がより高まっている。特に、中国をはじめとする東アジア、シンガポールやタイを中心とした東南アジア、さらにインドでのビジネス進展に期待する企業は多い。

 こうした経営環境のなか、企業のシステム担当者から「グローバルでのガバナンスを強化したい」という相談を受けることが増えている。それに対する筆者の提案の1つが、グローバルERPの導入である。その理由について述べる前に、ここではまず、海外に拠点を持つ日本企業におけるガバナンスの現状について見ていく。

拠点任せのシステム化でビジネス継続性に黄信号

 従来、日本企業の本社システム部門は、海外拠点のシステムにあまり関与してこなかった。このため、日本企業の海外拠点では、担当者が自力で情報を収集したうえで限られた予算を割き、販売や生産といった業務ごとに様々なベンダーのパッケージソフトを導入してシステムを構築してきた。表計算ソフトを駆使した手作りのツールを使い続けているところも少なくない。

 これは、日本企業が海外拠点の自立性を尊重してきたことのあらわれだろうし、筆者は様々な企業の海外拠点がそれぞれ業務効率化のために注いできた努力を否定するものでは決してない。しかし、結果的にはグループ内に異なるシステムやツールが拠点の数以上混在することになってしまった。その弊害は大きい。

 つまり、1つひとつのシステムは拠点最適にとどまっており、グループ全体で見るとデータや機能の重複や不整合が生じている。加えて、システムの面倒を見ていた担当者が会社を辞めてしまったり(海外ではよくあることだ)、本社に戻ったりすると、そのシステムは使われなくなりがちである。ユーザーはいつの間にか、手元の表計算ソフトなどを使って業務を回すようになってしまうのだ。これでは当初のシステム投資が無駄になるだけでなく、手作業が増えて業務が属人化・非効率化する。ひいては、ビジネスの継続性に重大な影響を及ぼすことは想像に難くない。

 それだけではない。システムがばらばらであるがゆえに、拠点ごとの経理の監査証跡がとれないなど、内部統制上の重大な問題を抱えるケースも散見される。ある拠点が現地当局に支払っている税額が正しいかどうかすら本社からは分からない、といった深刻な事態も実際に起きている。

 標準の業務プロセスを埋め込んだ世界共通のグローバルERPは、こうした課題に対する有効な解決策の1つである。

 グローバルERPにより、経営層は海外拠点の財務や出荷量などの情報を、本社にいながらリアルタイムで把握できる。このため、必要なアクションを考え素早く実行できる。加えて、グローバルでどこでも同じ業務プロセスを運用していれば、拠点が独断で無駄な業務を実施するリスクが減少する。本社の経営層や事業の責任者が、定められたルールに沿って業務内容の評価をしやすくなるメリットもある。

 このように、グローバルERPを導入することで本社によるガバナンスを強化できる。本社経営トップの意思に沿い、文化も教育レベルも様々な海外拠点の人材の足並みをそろえて一定の業務品質を確保できるわけだ。

システムブループリントを作成、費用対効果のイメージをつかむ

 日本企業はこれまで、国内拠点へのERP導入に数十億円単位の巨額を投じてきた。各事業部門やユーザーの意見の多くを聞き入れ、膨大な追加機能を盛り込んだからだ。そうした経験を持つシステム担当者が、「ERPをグローバル展開するとなれば、さぞかし莫大な費用がかかるはず。そんな資金的な余裕はない」と躊躇するケースは少なくないと思う。だが実は、業務プロセスの標準化を前提にしたグローバルERPは、比較的安価に実現できる。

 グローバルERPのおおよその費用感や現実的な効果を確認するには、業務標準化および「システムブループリント策定プロジェクト」を実施するとよい(図1)。まず、複数の事業から規模などに応じてモデル拠点を1つずつ選び出し、それらの業務およびシステムを網羅的に把握。様々な課題を識別して対応策を立案するとともに、業務プロセス標準を定める。この業務プロセス標準に基づき、グローバルERPの青図(ブループリント)を、2〜3カ月程度で策定するのだ。

図1 業務標準化およびシステムブループリント策定プロジェクトのアプローチ
図1:業務標準化およびシステムブループリント策定プロジェクトのアプローチ(図をクリックで拡大)

 こうしてブループリントを策定すると、たとえ事業や拠点は異なっても業務プロセスは意外に似通っており、つきつめれば標準化できることが分かる場合が多い。これは、ほぼ標準機能のみに絞った1つのERPを複数拠点が共同利用できるということを意味する。標準機能を活用し、追加機能を極小化すれば、数億円程度でERPをグローバル展開できる。この程度の投資であれば、十分に効果とのバランスをとれるはずである。日本で生産した商品を中国で販売するといったグローバルサプライチェーンを構築しているような企業については、より大きな投資対効果を期待できる。

 ただしもちろん、ブループリントは画に描いた餅にすぎない。導入先が国内かグローバルかを問わず、ERP導入には途中の機能追加が相次ぎ費用が当初予算から膨れ上がるというリスクがつきまとう。そこで、グローバルERPを低リスクかつ低コストで導入するための4つのポイントを以下で述べていきたい。

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