[インタビュー]

「Web性能監視の最後のピースが揃った」、Gomezを買収した米Compuware幹部

2010年1月21日(木)IT Leaders編集部

米コンピュウェア(Compuware)は、アプリケーション開発/運用ソフトソフトウェアを提供するベンダーである。現在の主力製品の1つが、Webアプリケーションを対象としたパフォーマンス監視ソフトの「Vantage」。業務の視点やエンドユーザーの視点に立ったWebアクセス性能の監視や、ドリルダウンによるボトルネック分析ができる。

 2009年11月には米Gomezを買収し、Vantageを補完するSaaS型サービス「Gomez」をポートフォリオに追加。Gomezは、全世界に分散配置したWebクライアントからインターネットを介してWebシステムにアクセスし、Webシステムのレスポンス性能を監視するサービスである。10万件以上の拠点から、PCや各種デバイス、各種OSと各種Webブラウザを自由に組み合わせてアクセスできる。

 インプレスビジネスメディアは2010年1月19日、来日中の米Compuware幹部2人に、パフォーマンス監視市場の動向について聞いた。ワールドワイド・プロダクト・セールス担当のPatrick Stayer氏と、フィールド・テクニカル・サポート担当のGery Plourde氏である。

---Webアプリケーションの性能監視に注力するに至った経緯は。

Patrick Stayer氏: 1973年に会社を設立して以来、30年以上に亘ってソフトウエア・ベンダーとしてやってきた。この事業自体は変わっていない。当時はメインフレームを使ったソフトウエア開発の生産性向上に軸足を置いていた。

 1995年にはEcoSystems Softwareを買収し、C/S(クライアント/サーバー)環境を対象とした分野に進出、システム運用管理の領域で事業を拡張してきた。TivoliやOpenView(現HP Software)などの運用管理ソフトが競合だ。これにより、ネットワークやサーバーなどの稼働状況や性能の監視ができるようになった。

 2007年からは、事業ポートフォリオを整理した。収益性の低い領域や単体テスト/機能テストなどの事業から撤退した。代わりに、大きな収益が見込める分野として、エンドユーザーの体感(エクスペリエンス)市場、つまり、ユーザー視点に立ったパフォーマンス監視市場へと事業の軸足を移した。

 エンドユーザー・エクスペリエンスの市場は巨大だ。アナリストたちの見通しによれば、今後3年間で40%以上の成長率で拡大する。

---性能監視ツールの動向は。取り扱う性能監視ツールに変化はあったか。

 これまでは、ファイア・ウォールの内側、つまりデータ・センターの内部にフォーカスした製品(注:Vantage)を提供してきた。この製品を使うことで、監視範囲がデータ・センターの内部に限定されるものの、ユーザー視点(URL単位など)に立ってアプリケーションの性能を監視し、性能問題やトラブルを解決できていた。

 ただし、あくまでもファイア・ウォールの内側だけを監視する製品だったため、ファイア・ウォールの外部、つまりインターネットを介したWebアクセスは監視できていなかった。全世界から各種のインターネット・デバイスを介してアクセスするアプリケーションを監視したい場面で、実際のクライアント環境での体感性能を監視できていなかった。

 Webアプリケーションは日々進化している。Webクライアントに送り届けるコンテンツの種類もさまざまだ。さらに、Webアプリケーションをデリバリ(配信)するサービス経路も日々進化している。こうした状況の下、Webクライアントとの間のエンド・ツー・エンドの性能を捕捉するには、ファイア・ウォールの内側だけでなく、ファイア・ウォールの外側を含めたすべてを監視対象としなければならない。

 これが、2009年11月にGomezを買収した理由だ。

---ユーザー企業のIT環境に変化はあるか。

 今回、APAC(アジア太平洋)地域の70社の顧客を訪問した。ここで分かったことは、顧客や現地メディアの多くが、クラウド・コンピューティングやクラウド・サービスの利用に興味を持っているということだ。クラウドは、今後3年間で420億ドルの市場になるだろう。

 クラウド時代には、アプリケーションの構成が複雑化する。例えば、データ・センター事業者側や社内システム側、デバイス上など、複数のレイヤーにアプリケーションが存在するようになる。こうした複合的な環境を監視/管理していく必要がある。

 ところが、一方で、エンドユーザーにとっては、何か問題があったときに、それがプロバイダの問題なのか、Webブラウザの問題なのか、データベースの問題なのかといったことは、どうでもよいのである。エクスペリエンス(体感)として、問題があるか否かという、それだけが重要なのだ。

 現在、システム管理の市場に変化が起こっている。CPU監視などの細かな監視の需要から、エンドユーザー視点での体感を監視する方向へと変わってきている。この分野こそ、米Compuwareが注力したい領域だ。

---GomezはVantageを補完する位置づけにあるのか。

Gery Plourde氏: その通りだ。まず、大前提として、Webアプリケーションの階層が複雑化している。12階層などという階層でオペレーションが行われている。こうした複雑なアーキテクチャにおいては、あるポイントだけを監視していても意味がない。業務視点やユーザー視点での体感を監視できなければならない。

 もちろん、これまでのVantageでも、業務視点やユーザー視点に立った性能監視が可能だった。例えば、URLレベルで性能をトレースできた。これが、Gomezと組み合わせることによって、携帯端末や通信回線などを含めたかたちでユーザー・エクスペリエンスに影響を与える要素を捕捉可能になった。これまで欠けていた、パフォーマンス監視/管理にとっての最後の1ピースが揃ったのだ。

 VantageとGomezは有機的に連携する。ダッシュボード型の単一の監視コンソールで、ファイア・ウォール外とファイア・ウォール内にまたがったエンド・ツー・エンドの性能の可視化が可能になる。こうしたエンド・ツー・エンドの性能監視をしながら、性能問題が起こった際にはVantageの機能を用いてアプリケーションの深い部分までドリルダウンして分析できる。

---監視結果をベースに自律的に対策をとれるのか。

 サーバーの分野については、すでにCompuwareの製品を利用することで自律運用が実現できている。現在、取り組みを始めているのは、ネットワーク分野の自律運用だ。これにより、例えば、状況に応じて必要な帯域を割り当てられるようになる。

米CompuwareでSenior Vice President, Worldwide Product Salesを務めるPatrick Stayer氏(左)と、Vice President, Field Techical Supportを務めるGery Plourde氏(右)
写真 米CompuwareでSenior Vice President, Worldwide Product Salesを務めるPatrick Stayer氏(左)と、Vice President, Field Techical Supportを務めるGery Plourde氏(右)

(修正2010/01/22 0:56)冒頭でインタビュー日時を「2009年1月19日」としていましたが、「2010年1月19日」の誤りでした。本稿では修正済みです。

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