[技術解説]

最新Xeon/Itaniumの違いを知る

サーバー向け最新プロセサの“今”を理解する Part2

2010年6月8日(火)IT Leaders編集部

Xeon 5600と同7500、Itanium 9300の違いを知る──。性能と省電力のバランスが特徴の最量販モデルXeon5600、拡張性と信頼性の高さを指向するXeon7500。これらx86系の延長にあるプロセサに対して、ハイエンドのミッションクリティカル用途を指向するItanium 9300。インテルの3種のサーバー向けプロセサを一言で表すと、こうなる。各プロセサの特徴を詳細に解説する。

インテルは2010年2〜3月、サーバー向け新プロセサ「Xeon5600番台」「Xeon7500番台」「Itanium9300番台」を相次いで発表した(表2-1)。いずれも、1つのプロセサに複数のコアを搭載することで性能向上を図るマルチコア製品である。

表2-1 Xeon5600番台と7500番台、Itanium9300番台のスペック
表2-1 Xeon5600番台と7500番台、Itanium9300番台のスペック

3シリーズの違いは何か。どんな用途を想定しているのか。プロセサはシステムの心臓部。その性能や機能は当然ながら、サーバーのアーキテクチャ全体に影響するし、ひいては最適なIT投資のタイミングも左右する。そこで以下では、性能や機能の比較を通じて3シリーズの特徴を明らかにしたい。

Xeon5600番台

5600番台は、5500番台と同じ「Nehalemアーキテクチャ」を継承しつつ、製造プロセス(半導体の配線幅)を45nmから32nmへと微細化したXeonプロセサである。プロセス微細化により、単位面積あたりに実装できる回路規模が拡大した。5500番台が1プロセサあたり最大4コアを搭載できたのに対して、5600番台は6コアまで搭載できる。加えて、性能向上に寄与する3次キャッシュ容量を、1.5倍となる12MBへと増強した。1次キャッシュ、2次キャッシュの容量に変更はない。

低電圧メモリーを採用 システム全体を省電力化

性能と電力効率を両立させている点が、5600番台の特徴だ。5500番台の熱設計電力(TDP:Thermal Design Power、設計上想定される最大消費電力)は、38〜130ワット。これに対して、5600番台のTDPは40〜130ワットである。コア数やキャッシュ容量が増加しているにもかかわらず、消費電力量は従来と変わらない。

プロセサそのものの電力効率向上に加えて、システム全体の消費電力も抑えた。これは、使用可能なメモリーにDDR3Lを追加した効果である。従来からサポートしているDDR3の電源電圧が1.5Vであるのに対して、DDR3Lの電源電圧は1.35Vと低い。DDR3Lの採用は5500番台から実装した省電力機構「インテリジェント・パワー・テクノロジー」と相まって、サーバーを省電力化した。

5600番台は、インテリジェント・パワー・テクノロジー以外にも多くの機能を5500番台から受け継いでいる。必要に応じて動作周波数を自動で引き上げる「ターボブースト・テクノロジー」や、単一コアで複数の処理を同時実行する「ハイパースレッディング」、プロセサとプロセサ、およびプロセサとI/Oコントローラ間の接続機構である「QPI( Quick Path Interconnect)」(表2-2)、仮想化支援機構の「バーチャライゼーション」といった機能である。

インテルは従来のFSBに代え、サーバー向けプロセサ全シリーズにQPIを実装した
表2-2 インテルは従来のFSBに代え、サーバー向けプロセサ全シリーズにQPIを実装した

仮想マシンのセキュリティをハードウェアで支援

5600番台はこのほか、2つのセキュリティ機能を他のサーバー向けプロセサに先駆けて採用した。①TXT(Trusted eXecution Technology)と、②AES-NI(Advanced Encryption Standard New Instruction)である。

TXTは、その名の通り「Trustedな(信頼できる)」実行環境であることをハードウェアレイヤーで保証する手法だ。BIOSやブートローダをはじめマシン上で動作するソフトが正当なものかどうかを、ハッシュ関数を使って判断するメカニズムを提供する。具体的には、プロセサとチップセット、TPM(Trusted Platform Module)と呼ぶセキュリティチップなどで実現する。

サーバー向けプロセサにTXTを実装したことで、例えば仮想化環境におけるセキュリティを強化できる。一般に仮想マシンはハイパーバイザーの機能で論理的に分離され一定の安全性が確保される。だが、ハイパーバイザーそのものが改ざんされれば、その限りではない。TXTはハイパーバイザーも含め、常に意図したソフトのみ稼働させる環境を構築する(図2-1)。

図2-1 Xeon5600番台
図2-1 Xeon5600番台は、「インテルTXT」と呼ぶ機能を実装。ハードウェアで仮想化OSやゲストOSを監視し、不正なソフトウェアの実行を防ぐ

AES-NIは、AES (Advanced Encryption Standard) 向けの暗号化処理に特化した7つの命令セットの総称だ。データの暗号化/復号化をハードウェアレベルで高速で処理することで、システム性能の低下を防ぐ。

Xeon7500番台

7500番台は、内部構造を従来の「Coreマイクロアーキテクチャ」からNehalemに変更。2〜8コアを1つのプロセサに搭載可能にした。

その最大の特徴は、拡張性の高さである。単一サーバーに8プロセサ、64コアまで実装できる。サードパーティが提供するノードコントローラを使えば256プロセサ、2048コアまで増設可能である。さらに、単一コアで2つの処理を同時実行するハイパースレッディング・テクノロジーを実装。1プロセサで16の処理、最大構成では4096もの処理を同時に実行できるようになった。

最大メモリー容量は、4プロセサ構成で1テラバイト、256プロセサ構成で64テラバイト。メモリー不足やI/O枯渇による性能劣化がしばしば問題になる大規模仮想化システムにおいて、7500番台は有効な解になるだろう。

このほか、7500番台は2つの点で7400番台から大きく進化した。QPIの採用と、RAS機能の強化である。以下で詳しく見ていこう。

4プロセサ構成ではプロセサ間を完全結合

7400番台においては、プロセサはすべてフロントサイドバス(FSB)でメモリーハブに接続されており、メモリーにアクセスするには必ずメモリーハブを経由していた(図2-2)。このため、各プロセサからのアクセスに競合が発生し、これがアクセス・レイテンシー(遅延時間)に大きな影響を与えていた。

図2-2 Xeon7400番台
図2-2 Xeon7400番台は、チップセット側に搭載されるメモリーコントローラを経由してメモリーにアクセスしていた。Xeon7500番台では、メモリーコントローラをプロセサに内蔵し、アクセススピードを向上している

そこで、FSBに比べて3倍のバス帯域、4倍の転送速度を持つQPIを採用した。さらに、メモリーコントローラをプロセサに内蔵させ、プロセサとメモリーをシリアルバスで直接接続することにより、プロセサ間のアクセス競合を軽減。アクセス速度を大幅に高めた。

4プロセサ構成、8プロセサ構成のQPIによる接続イメージを前ページ図2-3に示す。1つのプロセサは4つのQPIポートを備えているため、4プロセサ構成ではどのプロセサからも1ホップでメモリーに到達できる。しかし、8プロセサ構成の場合は、2ホップ必要なパスが存在する。一般的に、ホップ数が増えればレイテンシーは増加するはず。ところが、外部のベンチマーク結果によると、4プロセサ構成と8プロセサ構成の間では、リニアな性能向上が見られた。QPIの有効性を示す結果といえる。

図2-3 Xeon7500番台
図2-3 Xeon7500番台は、1サーバーあたり最大8プロセサ64コアを搭載できる。サードパーティ製のノードコントローラを利用すれば、256プロセサまで拡張可能だ。プロセサ同士や、プロセサとI/Oハブを接続する機構にはQPIを採用

OSにエラー復旧促しメインフレーム並みの可用性

7500番台における第2の進化は、信頼性(Reliability)と可用性(Availability)、保守性(Serviceability)を向上させる「RAS機能」の強化である。これまでのXeonもECC(Error Check and Correct)やミラーリング、スペアリングといったRAS機能を有していた。今回、これらに「データポイズニング/ヴァイラルモード」や「メモリー・ボード・ホット・アド」など20以上の新機能を追加した。その中で特筆すべきは、マシン・チェック・アーキテクチャ(MCA)である。

MCAはエラーを検出して報告するメカニズムだ。エラー個所を自動訂正するECC機能と連携し、予期せぬシステム故障や停止の危険性を軽減する。

それだけではない。MCAは、OSやBIOS、ファームウェアと協調してシステムを復旧に導く。例えば、メモリー上のデータにECCでは修復できないエラーが発生した際、OSに割り込み通知してシステムリカバリを促す(図2-4)。

図2-4 MCAによるエラーリカバリーの仕組み
図2-4 MCAによるエラーリカバリーの仕組み

MCAによる通知を受けたOSは、エラーが発生したデータを使用せずに処理を継続できるならば、そのデータを切り離して処理を継続する。アプリケーションがそのデータを使用中であれば、アプリケーションの実行を中止する。万が一、エラー個所がOSカーネルだったときは、そのエラー情報を記録したうえでOS自体をシャットダウンする。

MCAのメカニズムは、RISCサーバーやメインフレームではなじみ深い。インテルプロセサでも、Itaniumがすでに実装している。しかし、Xeonがこの技術を搭載するのはx86プロセサにとって大きな一歩である。

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