Linux最大手の米レッドハットは、「仮想化やプライベートクラウドの中核を占めるのはカーネルVM(仮想マシン)」だという。それはユーザーにどんな利点をもたらすのか。製品・技術を統括するポール・コーミア氏に聞いた。(聞き手は本誌編集長、田口潤)
─レッドハットは、最近、カーネルVM(KVM)を強調している。
コーミア氏:我々は、Linuxにハイパーバイザーを組み込んだKVM、具体的にはRed Hat Enterprise Virtua-lization(RHEV)が、これからの仮想化やプライベートクラウドの主流になると考えている。
VMwareやHyper-Vといった仮想化ソフトは、OSを別に購入する必要があり、導入コストや設定の手間がかかる。KVMならそうした問題は生じにくいし、そもそも仮想化ソフトとOSが一体になるのは自然な流れだ。
─RHEVの特徴は?
コーミア氏:オープンソースをベースにしており、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)やWindowsなどあらゆるOSをサポートすることだ。特定のミドルウェアにも依存しない。当社が販売するJBossはもちろんのこと、WebSphereなど他社製のアプリケーションサーバーと組み合わせ可能だ。ユーザーは様々な選択肢を得られ、大手ITベンダーが進めるロックイン戦略を回避できる。
もう1つ付け加えるならば、RHEVはグローバルのLinuxコミュニティで生み出される最新技術をいち早く搭載する。競合製品を大きく上回る性能と、信頼性を兼ね備えると自負している。
─だが仮想化ソフトではVMwareのシェアが圧倒的に高い。
コーミア氏:米国では事情が異なる。当社のシェアは高く、仮想化のリーディングカンパニーの1社と認識されている。日本でも大規模システムへの採用が増えている。東京証券取引所は、2010年1月に稼働させた株式売買システム「arrowhead」の基盤に、当社製品を採用した。米IBMやNTTコミュニケーションズが運営するクラウドサービスも、当社の製品を基盤にしている。
─米ユーザー企業の動きを聞きたい。
コーミア氏:すでに多くの企業が仮想化、そしてプライベートクラウドを構築済みか、構築段階にある。今後、パブリッククラウドを含めた複数のクラウド環境を必要に応じて組み合わせることで、さらに運用効率を高める動きが出てくる。異種クラウド間で、アプリケーションやデータを自在に配備するような動きだ。
そこで我々は「デルタクラウド」というコードネームで、クラウド間の相互運用性を高める技術を開発中だ。異なるクラウドから認証や課金、リソース管理といった機能を利用するための共通のAPIを提供する。クラウドベンダーにとらわれることなく、ユーザー企業はITリソースを自由に調達できるようになるだろう。2010年後半には、もっと詳しい話ができる予定だ。