[市場動向]

SAPジャパンがスマートグリッドへの取り組みを説明、「収集したデータをサービスにいかに転用するかが普及のカギ」

2010年8月31日(火)IT Leaders編集部

ITを利用して電力の安定供給を実現するスマートグリッド。米国ではオバマ政権が国家主導で取り組むことを表明するなど、世界中で注目を集める。それに呼応して、日立製作所や東芝、三菱電機といった国内大手もスマートグリッド関連事業を拡大。一方で、電力供給が安定している国内市場へのスマートグリッド導入には具体的なメリットが見えにくいとの声もある。情報システムの面からスマートグリッドへの取り組みを進めるSAPジャパンは2010年8月26日に記者発表会を開催し、同社の狙いなどについて説明した。

 独SAPは、顧客管理や料金計算、エネルギーデータ管理、設備管理といった機能をまとめた「SAP AMI Integration for Utilities」を、同社の統合業務(ERP)パッケージ「SAP ERP 6.0」の追加オプションとして2008年11月から販売している。欧米ではすでにエネルギー業界を中心に20社が導入しているという。

 米OSIsoftが販売する、スマートメーターから送信されたデータを収集する機能を持つメーターデータ管理・同期(MDUS)システムと連携。検針情報や電力の使用状況など、スマートメーターから送られるデータを収集して一元管理するのが特徴だ。SAPでは、収集したデータを同社のデータ分析ソフト「BusinessObjects」で活用することを想定している。

 注目度の高いスマートグリッドだが、国によって導入のモチベーションに差があるのが現状だ。米国では老朽化した配電網が少なくなく、電力の安定供給といった観点から、現状の電力計からスマートメーターへの置き換えが急速に進むと考えられる。一方で日本の電力供給事情は安定しており、「電力の安定供給が、スマートグリッド導入のモチベーションには直結しにくい」(松尾 康男サステナビリティ推進室室長)。

 そこでSAPジャパンでは、スマートメーターで得られた情報を、企業活動に生かすシステムの提案を進める。「たとえば介護サービス事業者であれば、家庭の電力の使用状況をお年寄りの安否確認に活用できる」(松尾氏)。現在は国内の自動車や住宅メーカーなどが、こうしたシステムの構築に興味を示しているという。複数の事業者間でデータ連携する際には、システムやスマートメーターによるデータ形式の違いなどが問題になるが、「Business Objectsが持つデータ管理機能によって吸収できる」(松尾氏)。

 スマートグリッドの応用に向けた実証実験も動き出している。独SAPや三井不動産、千葉県柏市、東京大学などが共同で、スマートグリッドを使ってエネルギーの効率的な管理を実現するスマートシティの実証実験を開始。柏市にあるつくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅前の高層マンションにスマートメータを設置し、データを収集するといった取り組みを始めている。

 情報システムだけではなく社会インフラの整備が伴うスマートグリッドは、一足飛びでの普及が難しい。だがSAPジャパンは「5~10年という長いスパンではなく、サービスへの活用などのメリットを明確化することで可能な限り早期の普及を目指す」(松尾氏)考えだ。

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