IT業界には女性が活躍できる環境が整っているのか―。IT企業を志す女子大学生・院生が抱く疑問や不安を払拭すべく、情報処理推進機構(IPA)は2010年10月28日に開催した年次イベント「IPA Forum 2010」で、IT企業を志す女子大学生・院生と、第一線で活躍する女性のITプロフェッショナルとのパネルディスカッションを開催した。その様子をレポートする。
パネルディスカッションには、アビームコンサルティングの小倉 稚奈シニアマネージャ、日本IBMの曽和 信子エグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー、NECの武田 喜美子シニアマネージャー、日立電子サービスの松長 由香里プロフェッショナルエンジニアの4人がパネラーとして参加。学生・院生の質問者として、早稲田大学大学院、津田塾大学/同大学院、東洋大学から5人の女子学生・院生が参加した。リコーITソリューションズの國井 秀子取締役会長執行役員がコメンテーターを務めた。
「出産・育児休暇後も復帰できる?」
登壇した女子学生・院生の多くが関心を示していたのが、出産時や育児時の会社のバックアップ体制だ。その1つが、出産時・育児時の休暇取得制度。日本IBMの曽和氏は、「当社は出産時に9割以上の女性従業員が育児休暇を取得しており、私自身も1人めの出産のときに取得した」という。同社は2011年1月に企業内保育室を開設し、託児に対する英語教育なども実施する予定であることも明らかにした。
休暇取得後の復帰も、IT業界で働く女性の間では常識になりつつある。女性従業員のべ450人以上の育児休暇の取得実績があるという日立電子サービスの松長氏は、「妊娠したことを伝える女性に対し、周囲の人は以前は『いつまで働くのか?』と聞くことが多かったが、最近では『いつ復帰するのか?』に変わってきている」と、出産後の復職が当たり前になっている環境を強調。NECの武田氏は、「自分が定年まで働き続ける意思があるかどうかが、復職するのに一番重要」と語った。
女性の育児休暇取得が浸透した一方で、男性の育児休暇取得は進んでいないようだ。育児支援体制が比較的整っている日本IBMでさえ、現在までの育児休暇取得者は11人という状況だという。リコーITソリューションの國井氏は、「育児休暇を取得する男性のロールモデルの形成が急務だ」と語った。
休暇取得による人事考査への影響はどうか。「少なくとも現在はそうした影響はなくなっている」と、日立電子サービスの松長氏は強調する。「私の初めての昇格が出産直後だったのも、そうした現状を反映していると言える」(同)。
出産時や育児休暇取得時のアドバイスとして、同氏は「自分が関与している仕事の進捗を、休暇取得時にバックアップしてくれる可能性がある人に伝えておくことが、気持ちよく復帰するために大事」と強調。日本IBMの曽和氏は、「育児取得時には相当悩むだろうが、出産直後の体では、出産前と同じようには仕事ができないのも事実。割り切って休暇を取得するのも1つの決断」と語った。
女子院生からは、「女性が組織のトップに就くにはどうすればよいか」という積極的な質問も飛びだした。リコーITソリューションの國井氏は、「もっと上昇志向になるべきだ」と主張。「女性は出産や育児などを考慮してか、上昇志向が十分でないというのが、私の見方だ。実力があるのに昇進できないのは、上昇志向でないのが原因となっているケースが少なくない。社長、役員になるという気概を持って頑張ってほしい」と激励した。
「IT業界=男性社会?」
女性学生・院生が抱くもう1つの心配のタネは、職場の男女比だ。情報系の研究科に在籍しているという院生は、「周りの学生や院生は男性ばかり。技術職には女性が少ないのでは・・・」と、女性エンジニアが少ないことに対する不安を抱く。
確かに、IT業界で働く女性の数はまだ少ない、というのが現状だ。登壇したパネラーの所属企業のうち、女性従業員の比率は日本IBMで30%前後、NECでは10%前後。だがNECの武田シニアマネージャーは、「現在採用している女子学生・院生の比率は、その年度での全採用数の20%程度に上がってきている」と、女性従業員が拡大傾向にあることも明らかにした。
「女性ならではの強みは」との学生の問いには、アビームコンサルティングの小倉シニアマネージャが「コミュニケーションやチームの調整は、女性の方が得意なのではないか」という考え方を示した。「IT業界はチームで作業を進めるケースが多い。こうした能力は、IT業界で働く上で必須」(同)。日本IBMの曽和氏は「同じことを言っても、女性がものを言うと、角が立ちにくい傾向があると感じる」と語った。
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