米国において、BIが企業の競争力に大きく貢献することはもはや常識。 その活用は中堅企業にも広がり、オープンソースやSaaS型のBIが人気を集めている。 一方で、分析だけでなく“予測”を可能にするBAへの注目も高まりつつある。
米国データウェアハウス協会は、BIを次のように定義している。「データを情報に、そして情報を知識に変換するためのプロセスやツール、テクノロジーを活用して、企業活動を効果的に遂行するための計画である」。
近年の景気後退を背景に、そのBIの重要性がますます高まっている。仕入れや売上といった日常業務で発生する詳細な実績データを基に、「どの時期にどの商品がどれだけ売れているか」「いつ、どこで、どういった問題が、どういう頻度で起きているか」をBIを使って分析。顧客のニーズに合った商品・サービスの提供や、精度の高い需要予測による機会損失防止といった業績向上策につなげようというのだ。
実際、米国においてBIは導入企業に大きな効用をもたらしている。特に、小売業においてその傾向は顕著だ。IT市場調査会社であるAberdeen Groupは2010年1月〜4月、小売業117社を対象にBIの導入に関する調査を実施した。この調査は、対象企業を業績(売上利益率、資産利益率、顧客保持率)に基づき3つのクラスに分類。クラスごとのBI導入状況を明らかにしている(表4-1)。調査結果を見ると、業績が良好な企業ほど積極的にBIを活用していることがうかがえる。
百花繚乱のSaaS BI
BIの効果が明らかになるとともに、大手の企業アプリケーションベンダーはBI市場に触手を伸ばし始めた。2007年ごろのことである。口火を切ったのはHyperionを買収したOracleだった。SAPがBusiness Objects、IBMがCognosを買収し、これに続いた。
ただし、こうしたメガベンダーが提供するBI製品は、導入に当たって巨額の投資が必要になる。規模にもよるが、上記ベンダーのBIパッケージを購入し、データウェアハウスを構築するとなると、数10万ドルかかるのが相場である。大企業ならばまだしも、中小企業にとってBIは高嶺の花であった。
しかし、オープンソースやSaaSにより、BIはぐっと導入しやすくなった。Gartner Groupが2010年4月に発表した調査報告によると、BI導入にかかるコストの平均は、提供形態によって表4-2のようになる。オープンソースやSaaSの価格面での優位性は一目瞭然だろう。実際、米国ではJasperSoftやPentahoといったオープンソースのBIベンダーが順調にユーザー数を伸ばしている。
SaaS BIに至っては現在、100社以上のプロバイダがサービスを提供し、互いに覇を競い合っている。表4-3にそれらの一部を示す。このほか、ADVIZOR SolutionsやAnalytix On Demand Autometrics、BIRetail、Blink Logic、GoodData、Host Analytics、Kognitio、Panorama、Pivotlink、Qliktechなどが有力だ。SAS Instituteをはじめとする既存の大手BIベンダーも、こぞってSaaS方式でBIを提供し始めている。その背景には、大企業向けBI市場に飽和の兆しが見えてきたことがある。
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