オフショア開発によりコスト削減を図る企業は多い。だがそれだけでは中長期的に十分な削減効果が見込めなくなるのも事実だ。そこで欧米のグローバル企業の間では、海外の人材を直接雇用し、上流工程まで含めた広範な業務を任せる「キャプティブセンター」を設置する動きが広まっている。
ITにかかるコストを抑制するため、大手企業は海外のIT企業に業務を委託するオフショア開発を活用してきた。安価で優秀な労働力が見込めたからだ。しかし中長期的には、オフショア開発に出す業務が飽和し、継続的にコストを削減し続けるのは難しい状況が生じる。リーマンショック以降、コスト削減要求が一段と厳しくなった欧米企業ではオフショアの割合を引き上げようとしたものの、開発をオフショアするだけではほとんど削減できないという壁に突き当たった。
そこで委託する業務の拡大に踏み出す企業が現れ始めた。要件定義やアーキテクチャ策定といった上流工程を含めてオフショアし、人件費やプロジェクト費用をさらに縮小しようとしているのだ。だが、成果物の品質を左右する上流工程のオフショアには大きなリスクが伴う。こうした経緯を経て、安価な労働力を得られる海外に、IT関連業務を遂行する拠点「キャプティブセンター」を、自ら作る動きが活発化している(本誌注:キャプティブセンターは海外の人材で組織し、海外に拠点を置くシステム子会社)。自社の統制下で広範な業務をオフショアにシフトできるようになるほか、コスト削減が見込めることから、戦略的なIT投資に打って出やすくなる。
各種機能を集約しコスト削減を促進
キャプティブセンターは一般に、要件定義やアーキテクチャ策定といった工程から、開発やテスト、運用工程までを幅広く担う。グローバル企業においては、海外に展開する事業所のITを集中管理する役割も備える。予算管理やベンダーマネジメント、業務プロセスの標準化などに携わるわけだ。本国を含めた各国の事業所にあるIT部門は、商習慣や文化に応じたソリューションのローカライズを受け持つ。このような業務の切り分けを徹底し、キャプティブセンターにIT関連業務を集中することが、長期的かつ効果的なコストメリットをもたらす。
内製志向の強い欧米企業は2000年頃からキャプティブセンターに関心を寄せ、展開を加速させている。現在は成長著しいアジア市場を見据え、インドにセンターを構える動きが顕著となっている。
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