[イベントレポート]

HP、買収で加えた製品や技術を整理、アプライアンスにも注力

HP DISCOVER 2011(2011年6月6日〜10日/米ラスベガス)

2011年6月30日(木)鳥越 武史(IT Leaders編集部)

米ヒューレット・パッカードが最新戦略を披露した。クラウドやビッグデータといった情報システムの新しい潮流を支えるには、ハードとソフト、そして導入/運用ノウハウまで含めた総合力が重要になる。

この状況を踏まえ、米HPは製品分野ごとに開催してきた年次イベントを統合。2011年6月、主にユーザー企業に向けた総合イベント、「HP DISCOVER 2011」を開催した。単にイベントを統合しただけではない。現在、世界的な規模で起こっている変化に対するHPの最新の「解」、つまりは具体的な対応策を示すのが目的である。相次ぐ買収によって複雑化したHPの製品ポートフォリオを整理して提示し、ユーザーの理解を深める狙いもある。以下、基調講演や製品戦略を見ていこう。

基調講演
製品群の充足を強調

写真1 米ヒューレット・パッカードのレオ・アポテカー社長兼最高経営責任者(CEO) 写真1 米ヒューレット・パッカードのレオ・アポテカー社長兼最高経営責任者(CEO)

基調講演のホスト役を務めたのは昨年10月にHPの最高経営責任者(CEO)に就任したレオ・アポテカー氏(前職は独SAPのCEO)。同氏はまず、「(TwitterやFacebookなど)企業と顧客とのコミュニケーション1つとってもこの1年に環境は大きく変わった。激動の時代に対処するにはITに対する考え方を根本から変え、ビジネスプロセスやITインフラを柔軟にすることが不可欠。それが大きな競争力になる」と述べ、それらを体現する組織体「Instant-On Enterprise」を目指すべきだと聴衆に訴えた。さらに「カギになるのがクラウド。既存システムを維持/高度化しつつ、プライベートやパブリックのクラウドを企業システムに取り込み、統合すべきだ」と続けた。

その上でオンプレミス/クラウドの統合支援サービス群「HP Hybrid Delivery」をすでに提供していることや、今後は統合管理ツールの拡充を進めることなどに言及。「HPは企業がクラウドを活用する上で必要な製品や技術すべてを提供する」と言い切った。

2011年3月にパブリッククラウドの提供を発表したのも、こうした戦略の一環である。提供開始時期は伏せられてきたが、今回のカンファレンスで初めて「まずストレージサービスから、まもなく提供開始する」(アポテカー氏)と明言した。価格には触れなかったが、本誌の取材に応じたデータセンターサービス担当副社長のロブ・テーラー氏は「Amazon S3など既存のサービスと十分対抗できる料金にする」という。

基調講演には、アポテカー氏に続いて米インテルのカーク・スカウゲン副社長や、米マイクロソフトのケビン・ターナー最高執行責任者(COO)、独SAPのビル・マクダーモット共同CEOといった主要ベンダーの責任者が登壇。口々にHPとの協業を推し進める姿勢を示した。プロセサ「Itanium」向けソフト開発などを巡り、HPとの対決姿勢を強める米オラクルからの登壇はなかった。

初日の基調講演会場の様子
写真2 初日の基調講演会場の様子。イベントには、世界各国からのべ約1万人が参加した

製品戦略(1)
ストレージ製品群を統合

LeftHand NetworksにIBRIX、そして3PAR。HPが買収による製品拡充を積極的に進めている分野がストレージだ。ペタバイト級の大量データの処理基盤として、あるいはプライベートクラウドの基盤として、ストレージの重要性が増していることが背景にある。

HPは買収で獲得したストレージ製品と自社の既存製品「HP StorageWorks」のラインナップを整理し、製品ブランドを「HP Storage」に統合すると発表した。インタフェースを基準にカテゴリを分ける。SANについては旧LeftHandのiSCSI製品、旧3PARの製品、旧HP StorageWorksのSAN対応製品で構成する。NASについては旧HP StorageWorksのNAS対応製品と旧IBRIXの製品という形だ。

注目は「Store360」というストレージ向けの次世代ソフト。開発中で詳細は明かさなかったが、「インタフェースにかかわらず、複数のストレージ製品を1つのリソースプールとして使えるようにする」(HP Storage担当上級副社長のデイビッド・スコット氏)。

製品戦略(2)
アプライアンスに注力

もう1つの注目点は、サーバーやネットワーク、ストレージなどのハードと運用管理ツールなどのソフトを組み合わせ、用途ごとに事前設定や動作確認を済ませたアプライアンス製品を着実に増やしていること。「HP Converged Systems」というブランドが付けられており、今回、HPは仮想化によるサーバー統合を目的とした製品「HP VirtualSystem」、大量データ分析用途の製品群「HP AppSystem」を発表した。

2011年1月に発表済みの、サービスカタログ機能などを備えたプライベートクラウド構築用の製品「HP CloudSystem」もこのブランドに含まれるので、ラインナップは3製品に広がったことになる。このブランドを統括するデイブ・ドナテリ上級副社長は「アプライアンスは複雑なシステムを簡便かつ低コストで導入できる利点がある。需要は拡大すると見ている」と語る。

HP Vertica Analytics System 写真3 データ分析アプライアンスの新製品「HP Vertica Analytics System」。会期中には数多くの新製品を発表した

新規発表製品のうちHP VirtualSystemは、ブレードサーバーシステム「HP BladeSystem」に、旧3PARや旧LeftHandのストレージ、VMwareなどの仮想化ソフトを搭載。サービスカタログなどの機能を備えず中途半端な印象もあるが、「一足飛びにプライベートクラウドに行かず、まずサーバー統合を進めたいという企業が少なくないため」(Converged Infrastructure担当副社長のダンカン・キャンベル氏)という。

もう1つのHP AppSystemは、大規模データ分析向け。2011年2月にHPが買収したバーティカの分析ソフトを搭載した「HP Vertica Analytics System」が新製品で、カラムストア型DBを採用する。列単位でデータを持つことで分析処理を高速化するのが特徴だ。

なお、すでに発表済みのSAP HANAや、マイクロソフトと共同開発した「HP Enterprise Data Warehouse Appliance」も、HP AppSystemのラインナップという位置づけになった。

展示ブース
モジュールDCに注目

これまで3つのイベントでカバーしていたソフト/ハード製品が一堂に会したため、展示会場はHP自身のブースが大半を占めた。中でも目立っていたのが、モジュール型データセンター「HP POD 240a(EcoPOD)」だ。同社が開発した外気冷却技術「HP Adaptive Cooling」により、データセンターの全消費電力をIT機器の消費電力で割った値のPUEを最小1.05に抑えた。PUEの値が1に近いほど冷却効率が高い。

HPのほかにも、独SAPや米マイクロソフトなどが出展。国内企業関連では、日立製作所の米国子会社である日立IDシステムズがID/パスワード管理製品などを出典していた。 (鳥越)

HP POD 240a(EcoPOD)
写真4 展示会場で参加者の目を引いた、モジュール型データセンターの「HP POD 240a(EcoPOD)」
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