ネットワークへの信頼性や性能に対する要件が厳しさを増している。 これに応えるには、従来からの延長線上で機器を増設するのでは限界がある。 ネットワークの構築や運用を抜本から見直すチャレンジが始まっている今、 ITリーダーが知っておくべき動きをまとめる。折川 忠弘 (編集部)
サーバーやストレージの仮想化技術などが進展し、コンピューティング環境の柔軟性は飛躍的に高まった。仮想サーバーを即座に配備したり、処理量に応じて増減させたりする。一部に物理障害が発生した際には、リソースプール内を“スライド”して稼働を持続させるといったことも可能だ。
これらの技術は、手間や時間(=コスト)をかけずにシステムを効率的に運用できる点もさることながら、変化の激しいビジネスにシステムを即応させるという観点で、大きな意味を持つ。
もっとも、「ITインフラ全体」のスケーラビリティや可用性をさらに追求する上では、まだまだ手を付けるべき余地がある。その筆頭に挙がるのがネットワークの領域だ。
オンデマンドの変更に対応
企業のネットワーク環境に目を向けると、その構築はケーブルを敷設(あるいは回線業者と契約)し、ルーターやスイッチといった機器に設定を施すのが通例だ。何らかの事情で構成変更が必要となった際には、設定用コンソールからネットワーク機器に対して「個別に」修正を加えるのが一般的。
つまり、コンピューティングの世界の構成変更がかなり「動的」であるのに対し、ネットワークは今だ「静的」な域を出ていない。
無論、技術進化が停滞していたわけではない。ルーター、スイッチ、ファイアウォール、ロードバランサなど個別領域においては着実に性能向上や機能拡張が進んできた。ただし、各ベンダーはハードもファームウェアも制御ソフトもすべて一体化したプロプラエタリな製品を提供する路線を歩んできた。結果、オープン化(あるいはデファクトスタンダード化)で多くの知見を集め柔軟性がとみに増したコンピューティング環境に比較すると、ネットワークのそれは相対的に遅れているかに見えてしまう。
だが、本格的なクラウド時代を見据えて状況は変わりつつある。ネットワークの構成やトポロジーをもっと動的に変更し得る新しい技術が胎動し始めたのだ。「まさに今は変革期。ネットワークの動向を軽視していては、真の弾力性を備えた企業ITはデザインできない」(ガートナー リサーチ部門 テクノロジ&サービス・プロバイダー コミュニケーションズ リサーチ・ディレクター 堀勝雄氏)。
具体的にどんな技術や規格に目を向ければよいのか。例えば、ガートナーが発表するネットワーク領域のハイプサイクルは、今後注目すべきトレンドを知る上で参考になるだろう(図1-1)。これらも踏まえた上で、企業のITリーダーが知っておくべき重要なキーワードとしては、以下の3つを挙げることができる(表1-1)。
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