にわかに熱気帯び始めたHadoop市場、製品/サービスの充実で企業ITの選択肢に──Hadoopが企業IT、特に情報系を支える基盤技術としての地位を固めつつある米国では、“Hadoop熱”の温度が上がって技術者の需要が急激に高まり始めているという。 ビッグデータを蓄積した先に、情報活用を深化させて利潤を得る機会が広がる。 Hadoopがもたらすそんな価値が、はっきりと見えてきたからだ。
栗原 雅 (編集部)
世界の“Hadoop熱”は日本で感じている以上に熱い。米ニューヨークで2011年11月に開かれたHadoopのイベント「Hadoop World」では1400人の参加枠がすぐに埋まり、会場に入りきらない160人が空席待ちのリストに並んだ。前年の参加枠を2倍以上に増やしたが、595ドルの参加費を払ってまでもHadoopの情報を得ようとするIT関係者の勢いが、それを上回った。
真の価値
より事実に近い情報に基づきビジネス上の判断を可能に
Hadoopはアパッチソフトウェア財団がオープンソースソフトとして公開している大規模分散データ処理基盤である。その中身は、米グーグルのシステムを参考に開発された分散ファイルシステムと分散処理基盤からなる。
安価なサーバー群でシステムを構成できるHadoopが、テラバイト級やペタバイト級のビッグデータの管理に向いていることは、よく知られている通り。ソーシャルゲームサイト運営のディー・エヌ・エーのように、日々10億件規模で発生する各種ログを全件まとめて長期にわたり格納しておける。
「全件」を「長期」に蓄えられる価値は決して小さくない。特に、事業分析や顧客分析など情報活用のシーンで得られる価値は大きい。「より事実に近い情報に基づいてビジネスの判断をくだす」という情報活用の深化が可能になるからだ。
ビジネスインテリジェンス(BI)など、企業はこれまでも情報活用の高度化を狙ってシステムを整備してきた。だが蓄積しておくデータ容量とそれに要するコストの兼ね合いから、BIで分析対象となる情報には、どうしても限りがあった。限定的な情報から得られたのは、大よその傾向。たとえるなら、解像度の低いデジカメで撮影した人物の集合写真を拡大したときに、何色の服を着た人が写っているか分かるレベルだった(図1-1)。
活用できる情報が増えることで、おぼろげにしか見えなかった事実がクッキリと見えるようになる
一方、全件かつ長期の情報を分析に使えるHadoopでは、同じ集合写真を高解像度デジカメで撮影するのと似た効果が得られる。拡大したときに男女はもちろん、人物の表情や服の絵柄など細部まで分かる。
例えば、リクルートはグルメ情報サイトの会員向けレコメンドメールを配信する際、かつては過去1週間分のサイト利用ログを使ってターゲットを抽出していたが、Hadoopの導入により用いるログを1年半分に拡大。十分に過去へさかのぼれるようになった結果、ターゲット数を増やせたのはもちろん、より正確にターゲットの属性を把握できるようになり、反応率も1.6倍に高めることに成功した。
国内外の動向
大手の製品/サービス展開で一気に整ってきた導入環境
Hadoopの使い勝手を高める周辺技術の強化や、導入を支援する製品/サービスの充実など、Hadoopを企業利用するための環境は急速に整ってきた。直近6カ月の大手だけをみても、米オラクルがHadoopを実装したアプライアンス製品「Oracle Big Data Appliance」を2011年10月に発表(表1-1)。同月、米マイクロソフトがHadoop専業ベンダーの米ホートンワークスと提携し、Windowsプラットフォーム向けのHadoopディストリビューションを提供すると表明した。
特に2011年秋以降、Hadoopの企業利用を支援する製品やサービスが急ピッチで整ってきた
国内では富士通がHadoopを備えるPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「データ活用基盤サービス」を2012年1月に開始。ファイルシステムの堅牢性を高めたディストリビューションを提供する計画もある。NECや日立製作所、NTTデータも導入支援サービスの拡充を図っている。さらに2月には、アパッチソフトウェア財団のHadoop開発コミュニティで中心的な存在にある米クラウデラが日本法人の設立を発表した。
以下、パート2でHadoopの基本機能と周辺技術を改めて概説し、パート3で国内外ユーザーの事例を総覧する。そしてパート4でHadoopの活用を支援する製品/サービスを紹介する。
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