[インタビュー]

座談会:OSS活用の道筋を探る 

企業ITに浸透するOSS Part2:今、改めてOSSと向き合い、企業ITでの活用可能性を探る

2012年5月15日(火)IT Leaders編集部

大規模分散データ処理基盤「Hadoop」を例に出すまでもなく、 オープンソースソフト(OSS)の存在感は日増しに高まっている。 OSSとどう向き合うのが、ユーザー企業とベンダーの双方にとって得策か。 ユーザー企業のIT責任者、ベンダーのOSS推進責任者、アナリストに話を聞いた。

原田 敬太 氏
原田 敬太氏
JFEスチール IT改革推進部長
1982年4月、川崎製鉄に入社。同社の水島製鉄所システム室長を務める。日本鋼管との合併で2003年4月にJFEスチールが誕生した後、IT改革推進部基盤グループ長として基幹系システムの統合プロジェクトに参画。リーダーとして新基幹系システム「J-Smile」のインフラ設計や構築をけん引してきた。2011年4月より現職

 

寺嶋 一郎 氏
寺嶋 一郎氏
積水化学工業 コーポレート 情報システムグループ長
1979年4月に積水化学工業に入社し、生産技術部において制御系システムや生産管理システムを開発。その後、積水化学工業の情報子会社アイザックで住宅事業向けエキスパートシステムの開発などを推進する。2000年6月、積水化学工業の情報システム部長に就任。組織改変により、2007年4月から現職

 

甲元 宏明 氏
甲元 宏明氏
アイ・ティ・アール シニア・アナリスト
三菱マテリアルにてサプライチェーン改革やグループIT戦略の立案を主導してきた。欧州企業との合弁事業ではグローバルIT責任者として欧州・北米・アジアを統括し、ERPの展開などを実施。2007年から現職。クラウドコンピューティングやスマートデバイス、オープンソースなど幅広い分野を専門に動向を分析している

 

吉田 正敏氏
日本OSS推進フォーラム アプリケーション部会 部会長(富士通 プラットフォーム技術本部 チーフストラテジスト)
1978年4月、富士通に入社。ベクトル型スパコンのOS開発などをけん引した後、OSS技術センターやトレーニングセンターの設立を手掛けてきた。2005年から日本OSS推進フォーラムのアプリケーション部会長などの要職に就き、OSSロードマップの策定やRubyアプリケーションのOSS化など、OSSの普及活動に従事している

 

─本日はユーザー企業のITリーダーやアナリストなど、異なる立場の方々にお集まりいただき、OSS(オープンソースソフト)の活用状況や活用に向けた課題などを議論します。初対面の方もいらっしゃると思いますので、まずは自己紹介から。JFEスチールの原田さんからお願いします。

原田: 原田です。弊社は川崎製鉄と日本鋼管が経営統合して誕生しました。統合に当たって基幹系システムをJavaで開発しました。私は川崎製鉄側のIT担当としてそのプロジェクトに参画し、主に基盤の担当をしてきました。2年前からIT部門を統括しています。

寺嶋:積水化学工業の寺嶋です。情報報システム子会社でシステム開発に携わり、2000年から全社のIT戦略を担当しています。多くのシステムはパッケージを使わず、ごりごりプログラムを書いて自社開発しています。

─最近の日本企業の中では、変わった存在ですね(笑)。

甲元:でも素晴らしいです。欧米の企業はパッケージソフトを使って短期間でシステムをリリースしているという話が注目されますが、実は自社開発も相当やっているんです。

寺嶋:そうそう、パートナーを使いながらも内製してますよね。

─JFEスチールも積水化学も日本企業だけれど、ITは欧米風?

一同:(笑)

─冗談はさておき、甲元さん、お願いします。

甲元:私が勤務しているアイ・ティ・アール(ITR)は、ベンダー独立のIT調査会社で、ユーザー企業に限ると年間200社〜300社とお付き合いしています。本日は数々の調査の中で浮かび上がってきた平均的なユーザー企業の状況をお話しできると思います。

─ITRに入る前は,どんな仕事を?

甲元:4年前までは三菱マテリアルの情報システム部門で、グループIT戦略の立案やサプライチェーン改革を推進していました。三菱マテリアルもシステムを手作りする風土があって、OSSも各種使ってきた経験があります。

─最後に吉田さん、よろしく。

吉田:本日は日本OSS推進フォーラムの立場で参りました、吉田と申します。このフォーラムは、OSSを活用して日本の企業力を高める目的で国内の大手ベンダーが集まり、経済産業省と総務省の後援で2004年に発足しました。クライアントやサーバー、アプリケーションといった分野ごとに部会を設けて、OSS活用の環境整備を進めています。

─中国や韓国とも協調したり、国への提言をまとめたりしている?

吉田:おっしゃる通りです。OSSの普及に貢献した技術者を表彰する制度なども手掛けています。私自身は富士通のプラットフォーム技術本部の所属で、OSSを用いたシステム構築プロジェクトの技術支援をしています。

是是非非でOSS採用を判断
それがユーザーのスタンス

─早速、本題に入りましょう。最初に原田さんと寺嶋さん、両社のOSSに対するスタンスをうかがいたいと思います。

原田: 弊社は必ずしもOSSを積極的に活用しているわけではなく、かといって否定的に見ているわけでもありません。OSSはベンダーによる囲い込みを回避する手段の1つだと捉えていて、システムのコストパフォーマンスが高まるなら使えるところは使うというスタンスです。

寺嶋:私どもも似たような考え方ですね。いわば是是非非でOSSを使うかどうかを判断しています。

─現時点で、どんなシステムに使っていますか。

寺嶋:情報系システムには、随分とOSSを利用しています。関連会社を含めてシステムの利用対象を広げようとすると、(商用ソフトやアウトソーシングでは)どうしてもコストが膨らむでしょう。ですから「グーグルのようなシステムを開発して社内に展開しようか」と言って、メールシステムやグループウェアを作ってしまったのです。

─Linuxや「Sendmail」などのOSSで?

寺嶋:ええ。IMAPサーバーやLDAPサーバー、DNSサーバーはもちろん、負荷分散やウイルスチェックの仕組みもOSSで自前で用意しています。

─業務系はいかがですか。

寺嶋:業務系ですと、例えばプログラムのバージョン管理にOSSを使ってきました。今はネットワークやサーバーの統合監視システムを、商用のパッケージソフトからOSSの「Zabbix」に大規模に切り替えようとしているところです。

─JFEスチールの状況はどうでしょう。

原田: お話したように基幹系をJavaで開発しているのですが、開発フレームワークに「Struts」を活用しています。この座談会に出席するにあたって、改めて調べたところメーラーの「Thunderbird」やデータベースの「PostgreSQL」「MySQL」など色々と出てきました。

オフィス製品も新手のOSSでフォントの互換性に関心

─情報系では使っていない?

原田: 最近、パソコンのOSを「Windows XP」から「同7」に上げるに当たり、オフィスソフトもマイクロソフト製品から「LibreOffice」というOSSに切り替える方針を固めたところです。経緯をお話すると、現状の「Microsoft Office 2000」から「同2010」にバージョンアップするか、あるいは他の選択肢があるのかを社内で議論したんですよ。使い勝手は当然として、既存のドキュメント資産を問題なく使えるか、文書を社外と交換したときに問題が生じないかなどを検証したうえで、OSSの採用を決めました。

寺嶋:オフィスソフトに関しては、弊社もしばらく前にOSSに切り替える方針を立てて、関連会社から「OpenOffice」の導入を進めようと考えていました。ところがサン・マイクロシステムズがオラクルに買収された後、混乱している様子でしょう。バージョンアップを含めて将来性が不透明になった印象があるので、どうしようか悩んでいるんです。

─そのあたり日本OSS推進フォーラムでは、どう捉えているのですか。

吉田:確かに迷走しているという話はあります。当フォーラムでも2011年3月11日の震災後、CD-ROMなどを使ってOpenOfficeを被災地域に配布する取り組みをしていたんですが、現在はLibreOfficeに切り替えています。

─簡単に言うと、OpenOfficeの開発メンバーが別れて作ったのがLibreOfficeですね。

吉田:ええ。もちろん(読み取り可能なファイル形式を拡張するなど)機能改良を加えて使い勝手を高めていますけどね。

─そういったある意味の、“不安定さ”がOSSの課題の一つでしょうか?

寺嶋:機能面もまだ完璧とはいきません。例えばオフィスソフトのフォントについて、OSSとマイクロソフト製品との互換性がもう少し高まったらいいんですが。

─フォントですか?

吉田:Windows用フォントとの互換性の問題です。

寺嶋:互換性が低いからマイクロソフト製品で作成したドキュメントを、例えばOpenOfficeで開くと表示が崩れるんです。

吉田:IPA(情報処理推進機構)がフォントを無償で公開しているので、各社が使い始めればフォントの問題はクリアできるはずなんですが、時間がかかるでしょう。

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