韓国製薬大手の保寧(ボリョン)製薬グループが、インフォテリア(現アステリア)のスマートデバイス向けツール「Handbook」を採用。外販にも乗り出した。同社はなぜ、日本製のツールを担ぐのか。現地で背景を聞く。

「韓国のユーザー企業と販売提携し、彼の地でHandbookを売り出します。取材しませんか」。インフォテリアからそんな招きを受け、4月初旬にソウル市を訪れた。スマートデバイス向けコンテンツ作成・配信・閲覧ツールであるHandbookを、ユーザー企業が自ら販売するとはいったいどういうことかを確かめるためである。
韓国といえば、Andoroid端末でシェアNo.1を誇るサムスン電子のお膝元。だからというわけでもないだろうが、スマートフォンの普及率は全人口の27%と、日本の6%をはるかに凌ぐ(Googleが2011年10月に発表した調査より)。
その韓国で、日本製のツールを自社で導入したばかりか、販売にまで乗り出したのは、保寧製薬(Boryung Pharm)グループ。中核である製薬のほかバイオテクノロジーやヘルスケア、ベビーケア、アパレルといった事業を展開し、グループ全体の年間売上高は6000億ウォン(約420億円)を超える。同グループは2011年12月、インフォテリアのスマートデバイス向けコンテンツ作成・配信・閲覧ツール「Handbook」を導入。2012年3月に利用を開始した。
今回、Handbook採用に至った経緯を聞いたのは、ツールの選定と導入を担当したBRネットコムのメンバーである。同社は、保寧製薬グループ全体のシステム開発・運用を担当するIT子会社だ。図書館情報システムなどの外販も手がける。


販売体制がないなら作ればいい
代理店契約を自ら申し出た
「韓国では、スマートデバイスを社員に配布する企業が増えている。しかし、せっかくの道具立てを十分に活用できている企業はまだ少ない。当グループもそうした悩みを抱えていた」。BRネットコムのキム・ソンス常務は、1年前をこう振り返る。2011年、200台のiPadをグループ内のMR(医療情報担当者)に“とりあえず”配布したものの、業務に生かし切れない状態が続いていたというのだ。
「この状況をなんとか打破すべし」。そんな経営トップの命を受けたBRネットコムのメンバーはまず、国内外のiPad向けツールや活用事例を徹底的に調査した。その結果、Handbookに注目。「専門性が高く複雑な医学情報を、MRが持ち歩くiPadにタイムリーに配信する」という利用シーンを描いた。「これにより、営業業務の効率化やペーパーレスを図れると直感した」(イム・キジュン課長)。報告を受けたキム常務は、「機能が優れていれば、どの国の製品であるかは問わない」と採用を決断。さっそく、担当者を日本に送った。
ところが、話はここで一時頓挫する。インフォテリアが、BRネットコムからの引き合いに対して慎重な姿勢を見せたのだ。当時、すでに開始していた中国でのビジネスに専念するため、新規に海外販路を立ち上げる余裕がなかったからである。しかし、メンバーはあきらめなかった。「だったら、当社が販売代理店になる。ハングル版もこちらで開発する」。自社導入と販売代理をセットにした契約を、インフォテリアに持ちかけた。
こうして2011年12月、Handbook導入が正式に決まった。その後、BRネットコムは2カ月かけてハングル化を完了。2012年3月、グループ内での本格利用を開始した。インフォテリアはその申し出に乗った。

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