[事例ニュース]

大阪大学とNEC、離れた場所にあるサーバーとGPUを接続する技術実証

PCI ExpressをEthernetで延伸する「ExpEther」を活用

2025年11月7日(金)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)

大阪大学D3センター(大阪府吹田市)とNECは2025年11月6日、サーバーからGPUをオンデマンドに利用する「広域分散型キャンパスAI処理基盤」の技術実証を共同で開始したと発表した。PCI Express機器をEthernet経由で利用できるようにする技術「ExpEther」を活用し、キャンパス内の離れた建物に設置したサーバー機とGPUをオンデマンドに接続・分離するAI処理基盤を構築する。

 大阪大学 D3センターとNECは、研究室の計算サーバーから、キャンパス内の離れた場所に設置したGPUをオンデマンドに利用する「広域分散型キャンパスAI処理基盤」の技術実証に取り組んでいる。AIアプリケーションを中心に動作確認と性能検証を実施する。

 D3センターは、大阪大学の研究・教育・業務を支援するための情報通信基盤および関連サービスを提供する施設。吹田キャンパス(大阪府吹田市)のサイバーメディアセンター本館内にある。大規模計算機システム、教育学修支援環境、キャンパスネットワーク、電子図書館システムなどを運営している。

 技術実証において、離れた場所にあるサーバーとGPUを接続する仕組みに、NECの「ExpEther(エクスプレスイーサ)」を活用する。ExpEtherは、産業機器などで使われるPCI ExpressやGPIO、フィールドパスなどの信号を高信頼・低遅延で伝送する技術。通常はコンピュータ内部に搭載されるPCI ExpressバスをEthernetを使って数km以上の長距離に延伸できる関連記事アドバネット、ExpEtherカードをNECと共同開発、PCI ExpressをEthernetで延伸)。

図1:離れた場所にあるサーバーとGPUをExpEther技術を用いて接続する(出典:大阪大学、NEC)
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 図1は、技術実証のネットワーク構成図である。D3センター本館に設置した計算サーバー(Express5800/R120j-2M)を、D3センターITコア棟にリソースプールとして設置したGPU(NVIDIA H100NVL)を、ExpEtherを用いて光ファイバ(100G Ethernet)で接続する。

 両組織によると、将来的にはリソースプール化したGPUやSSDをキャンパス内の各建屋の計算サーバーからオンデマンドに接続・利用可能な、広域分散型のAI処理基盤の構築を目指すという。また、治験データやゲノム情報などの機微データを安全に運用・管理するための専用ストレージサービスの構築も計画している。なお、NECは今回の実証で得た知見を基に、GPUを遠隔共有利用する基盤を2026年度に製品・サービス化する予定である。

 「ゲノムや治験などの機微性の高いデータをAIで解析・活用する需要が高まっている。これらのデータは厳格な管理が求められるため、不特定多数の利用者が共有する計算基盤は使えない。安全な環境下で厳格にデータを管理すると共に、これらをAI解析・活用する計算環境をオンデマンドに利用できる技術が求められている」(両組織)

 広域分散型キャンパスAI処理基盤の意義について、大阪大学 産業科学研究所教授の谷口正輝氏は次のように述べている。「複数の部局や研究科が連携して生命科学・医学分野のデータ解析を進めるには、高性能な計算資源を柔軟に活用できることが不可欠である。広域分散型のAI処理基盤によって計算環境をキャンパス全体で共有できるようになるため、部局横断型の共同研究や大規模なデータ解析が加速する」。

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