デジタル革命前夜に始まった私の30年変革記とテクノロジートレンド変化の歴史
2025年10月21日(火)CIO Lounge
日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、ロート製薬 執行役員CIOでCIO Lounge正会員メンバーの樋口正也氏氏からのメッセージである。

日本でインターネットの商用利用が解禁されたのは1993年11月(米国は1990年)。そんなデジタル革命前夜の1993年4月、私は日本IBMでキャリアをスタートしました。今から思えば不思議な未来の可能性を感じた直感的な選択でした。私の30年以上にわたるキャリアと、ビッグテックが世界を席巻し、AIが社会を変えようとしている激動のテクノロジー史を並走させた記録として、このコラムを書いてみます。
デジタル革命前夜~1993年から始まる変革期
入社当時の社内ITはまだメインフレームが中心でした。しかし1995年にWindows 95が登場すると状況は一変。今はなき米NetscapeがWebブラウザを普及させ、1994年創業の米Amazonがオンライン書店を開始。巨大小売業に成長する歴史を刻み始めました。
そんな中、私は研究や技術部門ではなく、経営計画部門でキャリアを開始しました。想定外ではありましたが、ここで損益計算書や貸借対照表と向き合って経営の視点を養えたことが、後に大きな財産となったと思います。「このスキルを、本来やりたかったエンジニアリングに活かせないか」──その思いが、次のキャリアの扉を開いたからです。
1990年代後半~2000年代:30年前のAIとソフトウェアの時代
世界はネットビジネスの拡大に伴う“ドットコムバブル”の熱狂と崩壊の時代。1998年創業のGoogle(現Alphabet)や2004年創業のFacebook(現Meta)といった、今日のビッグテックを象徴する企業が創業し、AppleもiPodやiPhoneを世に出して復活を遂げていきます。IBMは1990年以降、実に200社を超える企業を買収しハードウェアから「ソフトウェア&サービス」の企業へ大きくシフトしていきました。
そんな1990年代後半に私はIBMの開発部門へ越境します。26歳の時、CFOとCTOへの直談判という形で掴んだ、大きな転換点でした。最初に挑んだのは、財務のスキルを活かし、企業の財務諸表からニューラルネットワークで倒産確率を予測するシステムの開発。AIという言葉がもてはやされる、はるか30年近く前にその原型に触れていたことに不思議な因果を感じます。その後約10年間、3カ月ごとに新しい技術でプロジェクトに挑む日々を通じ、私の技術的な足腰は徹底的に鍛えられました。
●Next:クラウド、AI、DX時代を経て、これからの未来はどこに向かうのか。
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