日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、ヤンマーホールディングス 取締役 CDOで、CIO Lounge正会員メンバーの奥山博史氏からのメッセージである。

ITの活用やデジタル化はなぜ必要か
ITの活用やデジタル化は何のために必要でしょうか──。こう聞かれたときの回答は、ITやデジタルへの理解度や立場、業務経験などの違いによって、大きく分かれると思います。
例えば、「まずは紙の無駄をなくすことだ」とおっしゃる方もいれば、「業務をデジタルで完全に自動化・自働化する」と考える方もいらっしゃるかもしれません。ここまで極端ではなくても、さまざまな答えが存在する問いだと思います。読者の皆様はいかがでしょうか?
私自身はどうかと言いますと、デジタル化の目的の1つは様々なプロセスのPDCAを高速で回し、我々の内部プロセスや製品の進化スピードを最大限に加速させることだと考えます。典型的な意思決定のプロセス、言い換えればビジネスを進める上でのステップは、図1の4つのステップに整理できると思います。このプロセスは、ループのように継続的に回り続けるものです。

拡大画像表示
図には関連するデジタル・ITツールを示しましたが、さまざまなデジタル施策やIT施策に取り組んでいるのは、このループを高速で回すためにほかなりません。紙による手計算がなぜ効率的でないかというと、このプロセスが分断され、時間がかかってしまうからです。プロセスを高速で回そうとすると、やはりデジタルでつなぎ、情報が自動的に流れてループが回るようにする必要があります。今日ではAIが情報を読み取れるようにしておくことも重要です。
逆に言うと、このようなプロセスの高速化に貢献しないデジタル施策は、何を目的にしているのか、再考の余地があることになります。
●Next:ヤンマーにおけるPDCA高速化の取り組み例
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >
- DXの浸透のためにユーザー部門では何が必要か(2025/07/10)
- 日本企業のERP導入─課題克服と効果最大化への道(2025/05/30)
- 製造業における基幹システム刷新の意義(2025/04/22)
- ビジョン・ミッション・バリューで描くDXの道標(2025/03/27)
- M&AでIT部門がはたすべき役割とは?─ITの分離・統合の要点(2025/02/20)