「知識創造化」を導くビッグデータの活用が 社会とビジネスの諸課題を解決する 構造化データに加えて、人やモノから発信される多種多様な非構造化データが形成するビッグデータ。その活用に際しては、どのような管理・分析基盤が求められているのか。日立製作所のセッションに登壇した山口俊朗氏は、社内での活用事例の紹介と共に、このテーマにおける日立のアプローチ/技術/ソリューションを紹介した。
ビッグデータに対応した情報基盤と業務プロセスの確立が急務に
情報・通信システム社
PFビジネス本部 ビッグデータビジネス推進部
山口 俊朗 氏
山口氏はセッションの冒頭で、「ビッグデータの活用とは、各種のデータが意味するところを知識化して社会インフラや企業のビジネスにフィードバックする『知識創造化』のことである」と語り、交通データやICカード利用履歴、端末利用履歴、Webアクセスログなどのデータを収集し、蓄積・情報抽出・分析を行うことで知識化し、そのフィードバックから新たな知識を生み出していくビッグデータの活用サイクルを説明。その際に企業は、ビッグデータに対応した情報基盤と業務プロセスを確立することが重要であると述べた。
このテーマにおける日立の強みとして山口氏は、IT分野のみならず社会インフラ全般で各種システムの構築・運用・保守を手がけて培ってきた経験と技術力を挙げた。「実業とITの両領域で、ユーザー企業にとっての最適価値を協創する当社のuVALUEコンセプトは、利活用の対象が広範なビッグデータにおいても発揮されると考えている」(山口氏)
2つの社内活用事例における着眼点とビッグデータ活用技術
セッションの後半には、日立社内におけるビッグデータ活用事例が実装技術と共に紹介された。1つ目はガスタービン保全システムの事例で、世界中で稼働するガスタービンに対して1機あたりで200〜2,000個のセンサーを設置して、日次・週次・月次での稼働状況分析・監視を行うというもの。山口氏によれば、中央のデータベースに従来型のRDBMSを用いた以前のシステムでは、約200個のセンサーから収集された1年分のデータ検索に約11分を要しリアルタイム性を欠いていたうえ、分析の作業効率が悪くて多角的な分析を十分に行えなかったという。
ガスタービン保全事業の成否のカギを握るのは稼働情報分析の高度化にあると判断した日立は課題を解決すべく、インメモリ処理や差分計算処理によって膨大なデータの高速分析を行う「ストリームデータ処理」と、カラム単位でのデータ格納や圧縮格納によって時系列データを効率よく保管する「時系列データストア」の両技術を採用して、稼働データのライフサイクルに沿った管理・分析システムを構築した。
もう1つはデータセンター空調監視システムの事例だ。サービスレベルの向上と運用コストの低減が重要課題となる中、コスト全体の20〜40%を占める空調の効率化を図るため、日立は多点温度センサーが逐次発生する大量のデータをリアルタイムに監視・分析するシステムを構築。吹出温度やサーバー吸排気温度の相関分析といったラック単位での子細な監視により、熱だまりや気流異常を予兆段階で検知して空調稼働を適正化する仕組みを整えた。山口氏によれば現在、空調コストの5〜10%の削減を目標に実証評価を行っているところだ。
最後に山口氏は、ビッグデータの利活用を支える製品/ソリューションとして、ストリームデータ処理を担うミドルウェア「uCosminexus Stream Data Platform」や東京大学と共同開発中の超高速DBMS、バッチジョブ分散処理ソフトウェア「uCosminexus Grid Processing Server」、Hadoopの利用に最適化されたブレードサーバー「HA8000-bd/BD10」などを挙げ、それぞれに備わる特徴を説明した。
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