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[製品サーベイ]

電子ホワイトボード製品比較─大きなボード上でPC画面と手書き文字を“融合”

議論のポイントを確実に保存し有効利用する

2012年5月16日(水)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

PCの画面を表示するスクリーンと、手書き文字などを書き込むホワイトボードの機能を組み合わせた電子黒板。教育現場を中心に普及してきたが、その操作性と利便性から企業への導入も想定される。最新の電子黒板製品の特徴をまとめた。

会議やブレーンストーミングの場では、プロジェクタを使用してPCのプレゼン資料をスクリーンに投影することがよくある。大画面を使って出席者全員でスライドを共有できるため、説明した内容の理解を深めるのに役立つ。しかし、資料のここが大事と指示棒やレーザーポインタで示しても、後で配られた資料を読み返した時にはその個所に何も目印は記されていない。会議中のせっかくの議論やアイデアが残らないのは、実にもったいない。

そこでPCのプレゼン資料を表示するスクリーンの役割と、手書き文字などを書き込むホワイトボードの役割を合わせ持ち、双方の画面情報を重ねて保存できる電子黒板に関心が集まっている(電子情報ボードやインタラクティブ・ホワイトボードとも呼ぶ)。会議中に気づいた意見などをプレゼン資料に手書きで書き込めるため、重要個所に下線を引いたり、必要なコメントを書き込んだりして保存しておくことが可能となる。教育現場では生徒の学習意欲を高めるとして多くの導入実績があるが、今後は会議中のコミュニケーション促進や、顧客先で訴求力の高いプレゼンを実施することを目的に、企業が導入するケースが見込まれている。

提供形態の違いから4つに分類
コストや利便性に差異

電子黒板はPCに専用ソフトウェアをインストールすることで、PCの画面と手書き文字を書き込んだ画面を重ねて保存できる。画面はJPEGやPNGといった画像ファイルとして保存するのが一般的だが、一度利用した手書き文字などを次回の会議で再利用できるように、編集可能な独自形式のファイルで保存するものも少なくない。

なおマイクロソフトの「オフィス」は、電子黒板やタブレットデバイスで利用する場合に限り「インク機能」が有効となる。これにより、電子黒板用ソフトウェアを利用せずとも、パワーポイントやエクセルに手書き文字を書き込んで画像として保存できる。

手書き文字などの入力は、インクを備えない「電子ペン」を用いるのが一般的だ。電子ペンがボードに触れた位置を計測し、その座標をPCに送信して瞬時に画面に反映する。電子ペンの位置を計測する方法は、ペンが放射する超音波や赤外線を読み取る方式や、ペン先に備えるカメラがボードの位置を読み取る方式などがある。これら方式の違いから、書き込める対象が専用ボードに限られるもの、ペンで触れた個所と画面に反映した文字の位置にわずかな視差が生じるものなどの機能差がある。

そのほか、電子ペンを使わずに指を使って文字などを書き込めるものや、電子ペンや指をマウス代わりにして、スクリーンに表示するPCを操作できる製品などもある。

電子黒板は、提供形態により4つのタイプに分かれる(図1)。ホワイトボードやディスプレイそのものが電子黒板としての機能を備えるモデルのうち、プロジェクタを使ってPCの画面をホワイトボードなどに表示するタイプは、ホワイトボードとしての使いやすさを備えつつ、比較的安価に大画面で表示することを可能にする。

図1 電子黒板の形式は4つに分かれる
図1 電子黒板の形式は4つに分かれる

これに対し、PCの映像出力端子を使ってディスプレイに接続するタイプは、ディスプレイを備えるために高価だが、プロジェクタは不要で、明るい場所でも鮮明にPCの画面を表示できる。室内を暗くする必要がないため、手元に置く資料やノートなども見やすい。

市販のホワイトボードやディスプレイを電子黒板化するモデルは、電子ペンやペンの位置を読み取る小型レシーバなどで構成するタイプと、テレビやディスプレイに専用フレームを取り付けるタイプに分かれる。前者は専用ホワイトボードや専用ディスプレイが必要ないため、壁をボード代わりに利用してもよい(専用ボードに利用が限られるものもある)。レシーバはボードから容易に取り外せるため、外出先などに持ち運ぶのに適する。

後者はテレビやディスプレイを転用できるため導入コストを抑えられる。ただしフレームごとに対応するテレビやディスプレイの機種やサイズが異なるので注意したい。

なお、電子黒板製品にPCは含まない。自身のノートPCを持ち込んで接続する、もしくは電子黒板専用のPCを準備するなどの運用が必要となる。

主要な電子黒板を次ページの表にまとめた。特徴的な製品を中心に以下で紹介しよう。

ジェスチャーで操作性向上
文字をオブジェクトとして認識も

様々なタイプを揃える電子黒板の中でも、iPadなどのスマートデバイスで用いるジェスチャー操作を取り入れた製品が注目だ。

その1つがシャープが2012年1月に発表した「BIGPAD」である(図2)。専用の電子ペンを使って文字などを書けるほか、指でもペン同様に文字を書き込める。ディスプレイに触れた2本の指を開けば画面が拡大し、閉じれば縮小するといったiPad同様の操作にも対応し、手のひらを画面にあてると消しゴムとして文字を消すこともできる。画面を指ではじけば、次ページのスライドを表示することも可能だ。「スマートデバイスの普及により、ジェスチャー操作に慣れている人は多い。こうした人が電子黒板を簡単に扱えるように工夫した」(ビジネスソリューション事業推進本部 ディスプレイ事業部 商品企画部 部長 岡芳樹氏)。

図2 シャープの「BIGPAD」(80V型)
図2 シャープの「BIGPAD」(80V型)。操作パネルを画面上ではなくペン置き場に設置するオプションを用意。ボタンをカスタマイズして特定のアプリケーションなどを直接開くことができる

手書き文字をオブジェクトとして認識する機能も備える(図3)。書き込んだ文字の場所を後から移動したり文字色を変更したりできる。複数のオブジェクトをコピーし、次のスライドで再利用することも可能だ。

BIGPAD
図3 BIGPADは手書き文字を入力すると自動でオブジェクトとして認識する。拡大/縮小や回転などのほか、メニューを開いて文字色も変えられる

ただし、ホワイトボードを用いるタイプより視認性に優れるものの、高価である点は否めない。電子黒板としての機能を備えるため一概に比較できないが、市販の液晶ディスプレイは今なら60型モデルを20万円前後で購入できる。社内会議での利用を想定するなら、さらなる低価格化が望まれる。

プロジェクタの影をなくし画面の見やすさを改善

プロジェクタを用いるタイプの場合、説明する人がボードの前に立つと影で画面が見えなくなってしまう。そこでプロジェクタの影を取り除く工夫を凝らした製品がある。

ガイアプロモーションが販売する「MimioTeach」の場合、プロジェクタをホワイトボードの前方に置かず、裏側から投影できる専用ボード「D-Zone」をオプションで用意する。ボードの正面に説明する人が立ったとしても影は一切できない。ホワイトボードから数十センチの場所に取り付けて大画面に投影できる短焦点型のプロジェクタを用いれば、ボード裏側にスペースを割くこともない。

日本スマートテクノロジーズの「SB600シリーズ」やコクヨファニチャーの「プロジェクター付きスライド式電子黒板」などは、ボード上部に短焦点型のプロジェクタを取り付けることで、影をできにくくする。

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