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メインフレーム最新事情[海外編]IBM、ユニシスはクラウド対応やモバイル連携を加速

2013年9月17日(火)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

「月額使用料は数百万円から」が相場のメインフレーム市場にあって、日本IBMが買取価格を790万円からにした製品を発表した。ビッグデータ処理やモバイル連携などにも対応し、クラウドの高可用性基盤としての地位確立を目指す。他社を含め、メインフレームの最新事情を調べた。以下では、日本IBMと日本ユニシスの海外ベンダーの製品を紹介する。

日本IBM
マルチOSの一元管理で運用管理費削減を強調

 日本IBMがメインフレームの最新機種「IBM zEnterprise BC12(以下、zBC12)」を2013年9月21日から出荷する。13年中は処理能力が50MIPS(百万命令処理/秒)の最小構成機種を買い取り価格790万円(税別)で販売する。日本のメインフレーム市場の相場が、「OS込みの月額使用料が数百万円から」という中で、同社の独自メインフレームOS「z/OS」の月額利用料、約50万円を加えても、まだ“破格”だと言える(表)。

表:日本で販売されている主なメインフレームの最新機種または旗艦機種の主な仕様

 日本IBMのマーティン・イェッター社長は、7月24日に開いたzBC12の発表会において、「世界市場ではIBMのメインフレーム事業は伸びている。顧客は、可用性、信頼性、セキュリティ、そして拡張性を求めているからだ。zEnterpriseは、こうした顧客ニーズに対応した新しい価値を安価に提供する“プレミアム製品”だ」と強調した。

 zBC12は、中・小型に分類されるメインフレームで、12年8月に発表した旗艦機種「zEnterprise EC12(以下zEC12)」の拡張性を抑えたエントリー機になる(図1)。アーキテクチャや動作するOS、利用できる機能などは基本的に共通だ。CPUは、専用の64ビットCMOSプロセサで、同社のUNIXサーバー用プロセサ「POWER」と製造技術を共有している。動作周波数はzEC12が5.5GHz、zBC12は4.2GHzである。

図1:米IBMの最新メインフレーム「zEnterprize BC21」(スケルトン表示)と、
同機種を含む同社の全プラットフォームが採用する「Fabric based Architecture」
の概念

 zEnterpriseは、「チャネル」と呼ぶI/O処理特化の専用プロセサや仮想記憶によるメモリー空間の拡大など、限られたコンピュータリソースでもアプリケーションを動作させるための仕組みを持っている。既存アプリケーションを継続して稼働させるだけなら、プロセサ数やメモリー容量を大きくする必要性は低い。

 一方で、物理分割/論理分割により1台のメインフレーム上でzEnterprise専用OSの「z/OS」を、仮想化ハイパーバイザである「z/VM」上でz/OSやLinuxを、それぞれ複数稼働させられる。プロセサ数やメモリー容量が大きくなれば、より多数のOSを一元的に運用管理できることになる。zEC12ではプロセサ数は最大120個、メモリー容量は32GBから3TBまでを搭載できる。こうした構成では、z/VM上では数百単位のゲストOSが稼働するという。zBC12のプロセサ数は最大18個、メモリー容量は8G~512GBである。

連携するWindowsやUNIXにもzEnterpriseのガバナンスを適用

 IBMは、Z Enterpriseが持つ複数OSを一元的に管理できる運用機能を使って、分散しているオープンシステムの統合を提案する。「高止まりしている運用管理費を圧縮できる」(日本IBMの北沢強システム製品事業システム&テクノロジー・エバンジェリスト)との主張だ。

 具体的には、zEnterrpriseが持つ運用管理ツール「zEnterprise Unified Resource Manager(zManager)」により、連携するオープンシステムにもzEnterpriseの運用ガバナンスを適用する。zManagerは、zEnterpriseと連携しているUNIXやWindowsのプロセスを一つの実行単位として管理できるため、エンドユーザーに提供するサービスのレベルでプロセサ能力を割り当てられる。メインフレームとオープンシステムを一体運用することから、IBMはzEnterpriseを「ハイブリッド・メインフレーム」と呼んでいる。

 オープンシステムのうちLinuxは、「RHEL(Red Hat Enterprise Linux)と「SLES (SUSE Linux Enterprise Server )」がネイティブまたはz/VM上で動作する。日本市場における出荷処理能力の約6割がLinux用途で、Z上でのLinuxの稼働数は「前年比8割増で伸びている」(北沢エバンジェリスト)という。

 WindowsやIBMの商用UNIXであるAIXをzEnterpriseの専用プロセサ上で動作させることは、エミュレータが必要など効率が落ちる。そこで、ラック型の拡張ユニット「IBM zEnterprise BladeCenter Extention(zBX)」を使い、ここにPOWERプロセサやx86プロセサを搭載するブレードサーバーを組み込む。

 zBXとzEnterpriseは、ギガビット/秒のイーサネットで接続する。イーサネット接続による遅延を回避するために、TCP/IP互換のアクセラレータ「RoCE(ロッキー)Express」を用意し、両者間の通信速度を8G~9Gビット/秒に高めている。

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