[製品サーベイ]

「高集積サーバー」製品サーベイ─極小サーバーをぎっしり詰め込み、用途特化で“非仮想化”の強みを訴求

2013年7月23日(火)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

省電力プロセサを採用した極小の物理サーバーを筐体に詰め込んだ「高集積サーバー」。そこそこの性能を備えた大量のサーバーで、並列分散処理などの用途に応える。物理環境のまま使用することを前提とした、新たなカテゴリの動向を整理する。

“ベアメタル”という言葉は、サーバーにおいては「物理サーバー」を指す。サーバーは仮想化するのが常識と考えられつつあるが、ベアメタルとして利用することを想定したサーバー製品がここに来て次々にリリースされ始めている。それが「高集積サーバー」、あるいは「高密度サーバー」と呼ばれるカテゴリの製品だ。

ベアメタルをクラウド経由で利用可能に

仮想化せず、物理サーバーのリソースをクラウド経由で調達できるようにする動きが出始めた。

OpenStack Foundationは2013年4月、IaaS構築ソフト「OpenStack」の新版「Grizzly」(コードネーム)を発表。仮想サーバーを調達するのと同様の操作方法で、物理サーバーを調達できる「ベアメタルプロビジョニング」と呼ぶ機能を追加した。OpenStackを使ってクラウドを構築すると、サーバーリソースを仮想か物理か選択利用できるようになる。

この技術は、仮想化技術を用いることで生じる応答速度の遅延を解消するため、NTTドコモが開発したもの。物理サーバーを使ったサービスの応答速度は、仮想サーバーを利用したときに比べて、10〜50%程度は改善できるという。

APIを使って仮想サーバーを制御していた場合、物理サーバーも同様の操作で管理できる。複数の物理サーバーに対し、OSのインストールやアップデートを一斉に実施することも可能だ。

高集積サーバーを一言で表現すると、“超”小型化したサーバーをシャーシに高密度に実装する製品の総称である。1台のサーバーを仮想化技術で細かく区切って仮想サーバーを創出するのではなく、極小な物理サーバーを最初から詰め込んでおこうという発想だ。

サーバー仮想化における課題も解消する。1台のサーバーを論理的に分割する場合、ある仮想サーバーの負荷増大が他の仮想サーバーに影響を及ぼす恐れがある。障害が発生した際の影響範囲も特定しにくくなる。ハイパーバイザーというレイヤーを介すればエラーが起こる可能性は高まるし、ライセンス費もかさむ。小さな物理サーバーを並べただけのシンプルな高集積サーバーであれば、これらを回避できるのだ。

しかし、自ずと制約もある。物理サーバーを高密度に集約するとなると、発熱などの問題で高性能のプロセサは適さない。結果、省電力プロセサの採用が現実解となり、処理性能を追求するのは難しくなる。

それゆえ、低負荷で並列的に処理する用途に向く。例えば、Webサーバーなどの応答性能を重視するシステムや、デスクトップ環境をネットワーク経由で提供するシンクライアントなどでの利用を想定する。最近ではHadoopが代表するように、それほど性能の高くない性能を備えたサーバーを数多く並べ、そこで並列分散処理するソフトウェアの存在感が増している。これも高集積サーバーが適合する分野として注目が集まっている。

多くの企業はこれまで、高性能なプロセサを搭載した高額なサーバーを導入してきた。その結果、利用効率を引き上げるため、仮想化技術の導入を検討するのが一般的だった。しかしハードウェアの価格が下落し、「Xeon E3-1200L」や「Atom」といった比較的低性能なプロセサが台頭したことで、仮想化技術を用いる必然性はなくなりつつある。プロセサやサーバーの進化は、“非仮想化”という新たな選択肢を提示し始めた。企業はこうした動向に目を向け、高集積サーバーを活用する方策を今のうちから検討しておくべきだろう。

では具体的にどんな高集積サーバーがあるのか。主要な製品をまとめた(表)。以後、特徴的なものを見ていこう。

表 主要な高集積サーバー一覧
表 主要な高集積サーバー一覧
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