企業に持ち込まれたスマートデバイスを業務に利用させるか。一言で表すと、たったそれだけのことだが、いざ検討を始めると、クラウドやビッグデータに勝るとも劣らない奥深さを持つことが分かる。単なるコスト削減の手段として捉えると、本質を見誤る。改めてその意義を整理する。
スマートデバイスの普及に伴い、にわかに注目を集める「BYOD(Bring Your Own Device)」。個人所有のスマートフォンやタブレットから業務データにアクセスさせるべきか。頭を悩ませた読者も少なくないはずだ。各企業は、現時点でどのような判断を下したのか。今回の特集に合わせ、本誌の調査によれば、「BYODを禁止している」と回答した読者が51%で最多。「方針を決めていない」が23%で続く。「BYODを許可している」と回答したのは全体の14%。「検討中」を合わせても全体の2割程度に留まった。
米シスコが2012年に実施した調査では、対象となった米国企業の95%の企業がBYODを許可していると回答しており、国内外の差が際立つ。
セキュリティから人事まで多岐にわたるBYODの取り組み
BYODは使い慣れたデバイスを使って、仕事の効率を高めようとする行為。企業にとってみれば、推進すべきものであるはずだ。それにもかかわらず、企業にBYODを思いとどまらせているものは何か。最大の要因は、セキュリティリスクだ。今回のアンケートでも、80.8%が理由として挙げている。
業務データを扱う以上、セキュリティの確保は大前提。しかし、会社支給の場合と同様に、ツールを導入したり、機能を制限したりするのは難しい。従業員のプライバシーの問題もあるため、利用状況の把握にも限界がある。こうした負担を考えると、会社支給に傾くのもムリはない。
仮に、セキュリティの壁を突破しても、様々な難関が待ち受ける。例えば、どんなデータにアクセスを許可させるか、運用ルールを決めるためには、自社システムや従業員のワークスタイルを棚卸ししなければならない。
取り組みはITだけでは完結しない。勤務時間外に私物のデバイスを使って、業務をこなした場合、勤怠管理や賃金はどう処理すべきか。電話やデータ通信の費用は誰が負担すべきか。デバイスに業務データを保管する場合、法制度との整合性を図る必要もある。
BYODに詳しいコンサルタントやベンダーが口を揃えて、「単純に端末購入費や教育コストの削減だけを考慮すれば、とても割に合わない」と忠告するのはこうした背景からだ。
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