メインフレームの時代からIT基盤の一角を担ってきたストレージ。データ活用の巧拙が事業の成長を直接的に左右する時代、そこに求められる技術は以前よりもさらに高度化、複雑化している。まずは現時点での技術トレンドを俯瞰してみよう。
ビジネスを取り巻く環境変化の勢いはますます加速しており、ITインフラや、その運用に携わる担当者の役割も大きく変わりつつある。競争優位確立の源泉としてデータの高度活用が叫ばれる今、ITインフラの中核たるストレージにはどのような技術が強く求められているのか─。本パートでは、ガートナーが2012年7月に発表したストレージ技術のハイプサイクルに示された最新の技術動向を読み解きつつ、ユーザー企業が着目すべきポイントについて考えてみたい。
注目技術 1
【 ビッグデータへの対応能力 】
ストレージ選定の前提条件
企業情報システムの世界で、ストレージがサーバーに付随する“サブシステム”であった頃、その役割はシンプルにデータの安全な格納・管理にとどまるものだった。ベンダー各社は、ディスクの容量や処理速度、容量当たり単価、冗長化機構、ネットワークのデータ伝送速度といった基本要素のスペックでしのぎを削った後、1990年代から2000年代にかけて飛躍的な進化を遂げることとなった。
器が大きくなれば、人はより多くのものをそこに収めようとする。デジタルデータの増大と種類の多様化は、ストレージの進化と性能向上によって推し進められたものだと言ってよい。ただし2010年代に入ると、データの増大・多様化はそれまでとは異なった特性を示しながら、ストレージの進化ペースを超える勢いで加速する。すなわち、現在、ビジネスでの活用のしかたが議論されているビッグデータである。
ビッグデータは、ガートナーのストレージ技術ハイプサイクル最新版で「過度な期待のピーク期」の直前にマップされている(図1-1)。ガートナー ジャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティリサーチ ディレクターの鈴木雅喜氏は、ビッグデータを自社のストレージを検討する際の前提となる、最も重要な潮流だとして次のように語っている。「データの高度な分析が核となるビッグデータへの取り組みにおいて、これからのストレージには、時宜に応じてデータからビジネス価値を抽出しやすいようにする能力が備わっている必要がある」─。その能力として同氏は、データ・アクセス時の速度および柔軟性、キャパシティの拡張性、分析に向けた最適化、運用効率性を挙げる。
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