インメモリー技術を巡る市場の動き 性能向上を繰り返してきたITにおいて、今トレンドとなっているのが「インメモリー技術」だ。圧倒的な高速化により、これまで実現困難だった業務のあり方やシステム像を具現化できるようになる。インメモリー技術に関する動向を俯瞰する。
SAPジャパンは2013年2月、「SAP Business Suite powered by SAP HANA」を発表した。他社製RDBを用いず、同社のインメモリーDB「HANA」でSAP ERPを稼働させられるようにしたという内容だ。
それだけでは特段の新規性が感じられないかもしれないが、注目すべきはHANAに実装された技術。具体的には、OLTP(オンライントランザクション処理)とOLAP(オンライン分析処理)を1つのインメモリーDBで担うというものだ。性能や信頼性を担保するためにOLTPとOLAPは別々にシステムを用意するという従来のアプローチとは一線を画する。
同社の安斎富太郎社長は顧客向け発表会の席上、「HANAにはこれまでのITの制約を取り払うポテンシャルがあり、100年に1度の画期的な変革をもたらす」と強調。その言葉を鵜呑みにしないまでも、インメモリーDBは企業ITにどんなインパクトを与え得るものなのだろうか─。
性能向上のボトルネック一掃
背景にメモリー価格の大幅下落
ここ数年で「インメモリー」を銘打つアプリケーションやミドルウェアが続々と登場している(図1-1)。市場への第1のメッセージは、いずれも「処理の高速性」だ。システムの処理性能を追求していく上で、ディスクI/Oがボトルネックとなることが指摘されるのは周知の通り。メモリー上にデータを配置し、一連の処理を完結できればボトルネックは無視できるので“劇的な”性能向上が見込める。
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