[イベントレポート]

DevOpsに賭けるIBMの勝算

IBM Innovate 2013

2013年6月5日(水)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

2013年6月2日〜6日の5日間にわたり、IBMのRationalの年次イベント「Innovate 2013 —The IBM Technical Summit—」が米オーランドで開催されている。今回の見どころは何か。まずは初日のトピックをお届けする。

「ソフトウェアのイノベーションはビジネスのイノベーションに直結する。そしてイノベーションはDevOpsによって加速する」──。6月3日(現地時間)、米オーランドで行われたIBMのテクニカルサミット「Innovate 2013」のオープニングゼネラルセッションにおいて、IBM RationalのゼネラルマネージャであるKristof Kloeckner氏はこう明言した。

写真1 ゼネラルセッションに登壇したristof Kloeckner氏
写真1 ゼネラルセッションに登壇したKristof Kloeckner氏

数あるIBMの年次カンファレンスの中でも、Rationalチームが主体となって開催するこのInnovateは、エンタープライズソフトウェア開発に対するIBMからのメッセージが発信される場でもある。今年のテーマは「Stay Ahead」。常にソフトウェア開発のトップであり続けるという意味が込められており、そのためにはDevOpsというトレンドを避けて通れないというのがIBMの主張だ。

エンタープライズITの世界において耳にする機会が増えたDevOpsだが、この新たな概念がソフトウェア開発をどのように変えていこうとしているのだろうか。またIBMはDevOpsにどのようなアプローチをとろうとしているのか、ゼネラルセッションの内容を通してその概要を見ていきたい。

DevOpsが求められる理由

Kloechner氏は、現在のビジネスにおいて求められるニーズを

  • Less Overhead, More Innovataion
  • Less Defense, More Offence
  • Less Cost, More Profit

という短いフレーズで表現している。手間やコストを最小限に抑えながら、利益を最大化し、より多くのイノベーションを達成する。このニーズに応えるために最も必要とされるのは変化に対応するスピードだ。経営を取り巻く環境はかつてないスピードで変化を続けており、当然ながら企業が生き残っていくためには自身がダイナミックに変化していく必要がある。そしてそのためにはITのパワー、とりわけ、変化への対応を迅速かつ柔軟に実現するすぐれたソフトウェアが欠かせない存在となる。

現在のビジネスのニーズに応えるソフトウェアを作るには、やはり現在のトレンドを無視することはできない。Kloechner氏は「モバイル、クラウド、ソーシャル、そしてビッグデータという4つの破壊的なトレンド、そしてIBMが提唱するスマータープロダクツ、アジリティ、デリバリアナリティクスというソフトウェア開発における3つの規律、これらを意識したソフトウェア開発を進めていくことが重要になり、それを実現するもっとも無駄のない手法がDevOpsである」と語る。

写真 アプリケーション開発に、ますますアジリティが求められる
写真 アプリケーション開発に、ますます“アジリティ”が求められる

開発(Dev)と運用(Ops)が、お互いに情報を共有し、密な協調関係を築きながらソフトウェア/アプリケーションの開発と運用に当たっていく──このDevOpsという考え方が生まれた背景にもやはり市場が変化するスピードが劇的に加速しているという現状がある。とくにWebサービスの場合、サービス/アプリケーションを公開して終わりというわけにはいかず、公開後も市場の変化に応じた改変、つまり継続的なデリバリが求められる。ビジネスを成功させるというひとつの目的のために、開発と運用がそれぞれの専門性を活かしつつ、コラボレーションを図ることで、「開発工程における無駄や重複、そしてよけいな摩擦を減らすことができ、生産効率を大幅に向上させ、イノベーションの創出につながる」とKloechner氏は強調する。

時代が求める"Less"と"More"

ゼネラルセッションでは、Kloencher氏が挙げた4つのトレンドと3つの規律について、それぞれIBMのプロフェッショナルが5分程度のライトニングトークで紹介するという手法が取られた。また、それぞれにLessとMoreで表現したキャッチフレーズが添えられている

  • モバイル … Less Middlemen, More Consumers(中間業者を介さず、消費者とダイレクトに)
  • クラウド … Less Setup, More Capacity(導入はより短く、キャパシティはより多く)
  • ソーシャル … Less Ceremony, More Exchange(堅苦しさを取り除いて、より多くのつながりを)
  • ビッグデータ … Less Noise, More Signal(ノイズを取り除いて、多くの発見を)
  • スマータープロダクツ … Less Complexity, More Capability(複雑さを減らして、ケイパビリティの向上を)
  • アジリティ … Less Inertia, More Freedom(惰性を廃して、もっと自由に活発に)
  • デリバリアナリティクス … Less Surprise, More Insight(分析には意外性ではなく、洞察を)

このLessとMoreのスピードを加速するエンジニアリング手法がDevOpsであるというのがIBMの主張である。

ライトニングトークは開発者主体のイベントなどでよく行われているプレゼンスタイルであり、DevOpsの"Dev"である開発者に対してIBMの取り組みを積極的に訴求していきたいIBMの意向がこうしたところにも見えてくる。

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