あるPCを、ネットワークを介して別のPCで操作する「リモートコントロールソフト」。ITベンダーがユーザーサポートに積極的に活用するといった動きの中で、そこに求められる機能がどんどん高度化している。とりわけ昨今はセキュリティにかかわるキメ細かな管理が1つの焦点。技術的な難しさをクリアしブラッシュアップを続けるインターコムのLAPLINKは、医療関連など要件の厳しい分野にもシェアを広げている。
リモートコントロールソフトの市場で先駆的存在として知られるのがインターコムの「LAPLINK」である。最初に市場に登場したのは1990年代半ばのことであり、以来17年以上にわたって改良を積み重ねてきた。PCに専用プログラムを導入して使うタイプ「パッケージ版」の最新バージョンは2011年11月発表の「13」で、累計販売実績が30万本を超えるベストセラー製品となっている。
医療現場では高水準のセキュリティと機能性が求められる
リモートコントロールソフトが世にリリースされてから、ある程度の歳月が流れていることもあり、技術的に成熟した分野だと見る向きがあるかもしれない。だが、時代と共にユーザーのニーズは多様化・高度化しており、それに呼応する形で着々と進化を遂げているのが実際の姿だ。特に医療現場においてはシステムの電子化やネットワーク化が著しく、リモートコントロールソフトにおいても求められる要件が日々高度化している。
そういった新しい利用シーンの説明の前に、これまでの一般的な使われ方について紹介しておこう。
遠方に住む実家の両親がパソコンを始め、分からないことがある度に問い合わせしてくる。電話で話を聞いても埒があかないので、ネット越しにPCをつないで遠隔操作しながら手順を教えたり、トラブルシューティングに当たったりする─。プリミティブな用途ながら、リモートコントロールソフトが有効に機能するシーンの1つだ。
こうした基本的な機能を備えたソリューションという観点で市場を見ると、オープンソースのフリーウェアや、無料から使用を始められるSaaS(Software as a Service)などが続々と登場し、裾野が広がっているのが昨今の動き。Windows等のOSに一部の機能が内包されている例もある。
これらで個人用途のニーズは満たせるわけだが、企業や医療現場での本格的な活用となると、この限りではない。インターネットに接続できない環境もある。「第三者に勝手に操作されないようにするセキュリティへの備え、複雑化する企業ネットワーク環境への対応といった点で、ビジネス用途のリモートコントロールにおける技術要件は数段高いレベルにある。多くのノウハウを必要とするだけに、我々のような専門特化型ベンダーがアドバンテージを発揮できる」。こう話すのはインターコムの取締役で営業本部 副本部長を務める松原由高氏である。
医療系サービスベンダーが顧客サポートに活用
リモートコントロールソフトをビジネス分野で活用するといった場合、具体的にはどんな用途が考えられるのか。いくつかのパターンに分けて概観してみよう。
まず代表的なものとして、ITベンダーが自社製品/ソリューションにリモートコントロールソフトをあらかじめ組み込んで顧客に提供するという使い方がある。エンドユーザーが何らかのトラブルや困りごとに直面した時に、すぐさま事象を確認し、対応するための措置である。例えば、以下のようなケースがある。
- 業務アプリケーションベンダーの顧客サポート
- SIerが顧客に納品した業務システムを遠隔保守
- PCメーカーによるユーザーのトラブル解決
ユーザーは必ずしもハード・ソフトの操作に長けているわけではない。この点で、リモートコントロールソフトにあらかじめ必要な設定をほどこした状態でバンドルしておけば、ユーザーに面倒な作業を求めることなく、自社のサポートセンターから手厚いサービスを提供することができる。
このように、リモートコントロールソフトは顧客サポートで高い需要があるわけだが、各業種・業界によって求められる要件は様々だ。
医療機関向けなど、センシティブな情報を扱う業務アプリケーションの開発を担うベンダーが特に重視しているのが、セキュリティに関する機能である。リモートコントロールソフトをバンドルするはいいが、それによって第三者に悪用されることは絶対に避けなければならない。「遠隔操作する人の認証や、その人ができることの制限などをきめ細かく設定できることが評価された結果として、厳格なセキュリティ対策が求められる分野での実績が増えている」(松原取締役)という。
高い評価を受けているセキュリティに関する機能として、LAPLINKは通信時の256bit暗号化処理のみならず、リモートコントロール中に起動できるプログラムやアクセスできるフォルダを、ログインユーザーごとに細かく制御することが可能だ。もちろん、接続時のパスワード認証や、通信/操作ログの記録といった機能も漏れなく備えており、安全面での厳しい要件に応え得る機能が揃っている。
昨今、構成の複雑さが増しているネットワークへの対応にも余念がない。VPNでの接続はもとより、複数のセグメントにまたがった形やIPv6環境での接続も可能だ。インターネットやLAN/WANに限らず、電話/ISDN回線などの通信方式も使える。
これらのきめ細かな機能が医療現場のニーズと合致した結果、医療系サービスベンダーの採用実績を重ねているわけだ。