日本HP(ヒューレット・パッカード)は2013年9月5日、クラウドサービスの事業拡大に向けたパートナー支援策「HP CloudAgileプログラム」を、日本市場でも本格展開すると発表した。HP製品を使うクラウド事業者を対象に、製品およびクラウド関連技術の導入を支援すると同時に、市場拡大でも協業する。将来的には、HPが提供するクラウド・サービスの品質を訴えるための認定制度などの適用も考えているという。
HP CloudAgileプログラムは、HP製品を使ってクラウドサービスを展開する事業者を対象にしたビジネス支援プログラムである。HP製品を一定量以上、使用することを条件に個別契約を結ぶ。今回、NTTコミュニケーションズ、IDCフロンティア、インターネットイニシアティブ(IIJ)、日立システムズ、GMOインターネット、GMOクラウドの6社が契約した(写真1)。全世界ではすでに50社以上が契約を結んでいる。
クラウドサービス事業者はこれまで、サービス提供に使用しているハード/ソフト製品を積極的には公表してこなかった。しかし、ここにきて使用している製品のベンダー名を公表する背景には、企業ユーザーにとってもクラウド利用が特別なことではなくなってきたことがある。
パートナー契約を結んだIIJの松本光吉執行役員マーケティング本部長は、「ERPユーザーなどのクラウド移行案件が増えている」と話す。そのためもあり、同社はこのほど、独SAP社から同社ソフトをクラウド・サービスとして提供する事業者としての認定を受けた。
当然、ベンダーにすれば、製品の直接の販売先となるクラウド・サービス事業者の囲い込みが重要な意味を持ってきたこともある。HPはクラウド構築用ソフト群としてOSS(オープンソースソフト)の「OpesStack」を推すが、OpenStackは米IBMなど競業他社も積極的に推進している。クラウド・サービスとしての差異化は難しいかもしれない。実際、日本HPの山口浩直CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)によれば、「OpenStackを推すベンダー間でサービス連携に向けた取り組みが始まっている」。
HP CloudAgileプログラムでHPは契約パートナーに、プライベート・クラウド構築基盤としてHPが提供する「HP CloudSystem」やOpenStackに関する技術支援を提供。外部にあるクラウドのリソースの利用を可能にする「リソースバースティング機能」のAPIも提供する。IDCフロンティアの林眞樹技術開発本部本部長は、「企業のクラウド利用は、(オンプレミスと連携した)ハイブリッド型がほとんど。今後は、クラウド/サービス事業者間の横連携も重要になってくるだろう」と話す。
市場拡大に向けたマーケティング施策でも協業する。その一環として、HPの直販営業部隊による顧客提案も実施する。「クラウドサービスとして獲得した契約で利用するHP製品の売り上げは、HPの営業担当者の成績として評価対象にする」(日本HPの松波幹生執行役員クラウド営業統括本部長)ことで、営業担当者のモチベーションを維持する考えだ。
HP CloudAgileプログラムは、市場の早期立ち上げを狙ったもの。今後は、「パートナー企業のサービスレベルを認定する制度導入も計画している」(日本HPの山口CTO)という。