最近よく耳目にするようになった「MOOC(Massive Open Online Course:大規模オープン・オンライン・コース)」。提供プラットフォームや参加大学・講師の数が世界規模で増加を続けるMOOCには、単に最先端のオンライン教育の仕組みというだけでなく、さまざまな既存の枠組みを取り払う破壊力をもった動きだと筆者は見ている。以下、MOOCを理解するうえでの主だった観点を挙げてみたい。
「パッケージの解体」が教育の世界でも
いずれにせよ、学生という消費者を相手とするサービス業として教育を捉えると、問題となるのは提供者側のブランド力で、すでに著名な個人の中には、「大学の後ろ盾などいらない」となる人が出てきてもおかしくはない(コース履修完了者の質を担保できるなんらかの仕組みは必要となるが)。
一方、教育機関側でも“中抜き”されまいと、客を呼べる一部のスター教授を破格の条件で集める、という流れが顕著になろう。MOOCでの1つのコースの適正規模がどれくらいか、というのはこれから明らかにされていくと思うが、仮に数万人単位の利用者を見込めれば、廉価にコースを提供しても十分に採算が取れる(それだけ高給を支払うことができる)。
また、ネットの普及により新聞や雑誌の世界(「広義のパブリッシング」の世界)で生じたのと似た「パッケージの解体(unbundling)」現象が、教育の世界でも生じる可能性も多分にある。そして、このあたり――さまざまな学問のパッケージのしかたや、教える側の人材の育成など――のさじ加減・工夫が、教育機関にとっては存在意義となり、また経営を維持していくためのポイントになるかもしれない。
何にしても、オンラインの世界でのことなので、市場規模が1億2000万そこそこ、という日本(語)の市場を想定していては、10億の規模を前提とする競合相手にはあまり勝ち目がない(少子化、人口減少などについては言及の必要もあるまい)。
●Next:MOOCの台頭がもたらす変化
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