30年にわたる取り組みで「ハンディターミナル」の確固たるビジネス基盤を築いてきたカシオ計算機。モバイル機器を含めたWebシステムの共通プラットフォーム「Biz/Browser」に磨きをかけるオープンストリーム。ビジネススピードやコンシューマライゼーションの加速といった潮流の中で、両社のコラボレーションは顧客にどんな価値を提供し得るのか。2人のキーパーソンが語り合った。
カシオ計算機 守屋 氏 × オープンストリーム 佐藤 氏
30年にわたる取り組みで「ハンディターミナル」の確固たるビジネス基盤を築いてきたカシオ計算機。モバイル機器を含めたWebシステムの共通プラットフォーム「Biz/Browser」に磨きをかけるオープンストリーム。ビジネススピードやコンシューマライゼーションの加速といった潮流の中で、両社のコラボレーションは顧客にどんな価値を提供し得るのか。2人のキーパーソンが語り合った。
写真:的野 弘路
カシオ計算機 執行役員 システム事業部長
守屋 孝司 氏
1983年、カシオ計算機入社。2001年よりMSN部にてPDAの開発を指揮。2006年に海外営業の責任者として世界拡大施策を推進。戦略統轄部を経て、2013年からシステム事業の責任者としてシステム事業全般を統轄。
オープンストリーム 代表取締役社長
佐藤 浩二 氏
日本ユニシス、日本ヒューレット・パッカードを経て、2004年にオープンストリームに入社。2007年に社長に就任し、2008年に親会社の豆蔵ホールディングス取締役就任。現在5社のグループ会社役員を兼務。
佐藤氏:当社のBiz/Browserがカシオさんのハンディターミナル(HT)に搭載されて、すでに4世代めのモデルがリリースされています。それでも、業務用モバイル機器における貴社の長い歴史から見れば、まだ始まったばかりの協力関係と言えるかもしれませんね。
守屋氏:当社はいわゆる“ポケットコンピュータ”が登場した30年以上前から業務用モバイル端末に取り組んでいます。当初は料率計算などの用途で現場の担当者が電卓代わりにスタンドアロンで使うものでした。その後、通信環境やOSの進化と共に「できること」が圧倒的に増え、現在の多機能なHTへと発展してきました。
Biz/Browserの選定もその進化の一環です。インターネットの普及に伴い、Webベースの業務アプリケーションをHTでも使いたいというお客様のニーズが高まってきました。そこで、さまざまなミドルウェアやWebブラウザを検討したのですが、PCの世界をルーツとする一般的なブラウザはモバイル業務では重くて使い勝手が悪く、しかも接続が安定しない。それに比べて、モバイル端末への最適化にも力が注がれているBiz/Browserはパフォーマンスや信頼性の面で安定しており、オプション製品としての採用を決めました。その優位性は今も変わらず、“軽くて速くて安全”なモバイル用ミドルウェアとして信頼を置いています。
佐藤氏:ありがとうございます。コンシューマ製品と違って業務の世界では“つながらない”や“落ちる”といった事態はビジネスに大きな支障をきたします。ですからBiz/Browserでは、“画像を綺麗に描画する”や“動的コンテンツのレスポンスを向上する”といった機能は割り切って考え、通信スピードや安定性の確保、ネットワーク負荷の低減、上位互換性の確保など、業務ニーズを確実に押さえることに主眼を置いています。今後もその基本姿勢が変わることはありません。
顧客価値追求の姿勢がビジネスの競争力になる
守屋氏:HTは製造や流通、小売などの現場で、業務密着型で“ディープ”な使われ方をしています。ここで重要になるのは「端末が世代がわりしても同じアプリケーションを使い続けられる」ということ。同じアプリを5年10年と使い続けるケースは少なくない。この点、Biz/Browserが動くハードであればアプリを改修することなく使い続けられるのは、ユーザーにとって大きなメリットになります。
オフラインでの利用を考慮している点も見逃せません。例えば製造業の現場において、構内環境の制約などから一旦オフラインで使いつつ、後でネットワークにつないだ時点でデータを一括してバックエンドのシステムに送信するといった使い方が結構多いのです。そうした現場のニーズを熟知しているベンダーでなければ、こうした設計にはならない。そのあたりは、製品展開上の信念がありそうですね。
佐藤氏:既存資産の持続性など、“お客様にとっての価値”をどこまで真剣に追求できるか…それが、競争優位の源泉だと考えています。
守屋氏:それは当社にとっても同じことが言えます。スマートフォンやタブレットがすごい勢いで普及している現在、ビジネス用途でも“使い勝手”を吟味する目が厳しさを増しています。どれだけ顧客視点で物事を考え、それを製品やサービスに適用できるかが競争力に直結してきます。
佐藤氏:ボタンの配置やバーコードスキャナの位置、画面の大きさなど、日本製の業務用端末は、本当に考え抜かれているなぁと感心します。そうした顧客視点の優秀なハードにBiz/Browserを組み合わせることで、スピードや利便性の面でさらに付加価値をつけるお手伝いをできれば嬉しい限りです。
業務用モバイル端末にもコンシューマ化の流れ
佐藤氏:30年以上、業務用モバイル端末を開発してこられて、昔と今では何が一番変わったと思われますか。
守屋氏:大きく2つあります。1つはユーザーが求めるスピードです。いまや業務用端末だから処理が遅くてもやむを得ないとは誰も思ってくれません。例えば、接客の現場などでは、店員が端末からバックオフィスのDBにアクセスして、在庫の有無をその場で回答するといったケースは珍しくない。そのリアルタイム性こそがビジネスの価値につながっているのです。
もう1つは、先にも触れた通り、コンシューマのトレンドが業務用モバイル端末の世界にもじわじわと浸透していることです。この流れを受けて当社としてもHTの事業領域でAndroidへの対応を始めました。しかし、お客様の過去の資産をAndroidに移すことは一朝一夕にはできません。具体的案件でどんなニーズが出てくるか、今まさに探っているところで、Android端末におけるBiz/Browserの展開・協業もこれからの検討課題の1つですね。
佐藤氏:韓国や台湾のメーカーが、業務でも使える格安のAndroid端末をリリースしていますが、やはりビジネスでは直接的な競合として映りますか。
守屋氏:彼らは7インチの画面サイズながら1万円を切る端末を出してきます。はっきり言って価格ではかないません。しかし、価格だけが勝負ではないし、そんな消耗戦の土俵には上がりたくはない。注目すべきは、昔からHTを業務利用しているユーザーの多くが、そうした低価格端末に積極的にシフトしていない事実です。つまり、ハードとしての信頼性や、業務視点で見たソリューションの満足度、そして実績に基づいたノウハウが決め手になるという証左ではないでしょうか。コンシューマライゼーションの潮流は受け入れながらも、業務用端末としてトータルな完成度で勝負に臨みます。
佐藤氏:もしBiz/Browserに注文したいことがあればぜひお願いします。
守屋氏:業務端末に特化したミドルウェアとして、製造企画の初期段階からご協力いただければ助かります。単なるハード+ソフトの組み合わせでは実現できないスピードや操作性、周辺機器の拡張…互いの知見を持ち寄れば、顧客にもっともっと価値を提供できるのではないでしょうか。
佐藤氏:ぜひ一緒に取り組ませてください。業務用モバイル端末の進化に劣ることなく、Biz/Browserもさらに磨きをかけて、新時代を共に切り拓いていきたいと思います。