訴訟に至るようなITトラブルを防止するためには何を行うべきか。今回は、システム開発プロジェクトで重要な要素であるデータ移行が行えなかったため、訴訟になった事例を取り上げ、使えるシステムとしてのシステム構築におけるデータ移行の重要性をお伝えしたい。
今回の事例は、薬局の業務管理システム開発において、開発を請負った業者が旧システムから新システムへデータ移行を行えなかったため、発注者が契約を解除。支払った代金の返還を求めて訴訟し、それが認容されたものである(東京地判平22・11・18)。なぜ訴訟まで発展したのか、IT開発の現場に潜む落とし穴について解説する。
プロジェクトの経緯は以下の通りだ。
発注者は薬局を経営する会社であり、調剤業務を管理するシステムを使用して薬局業務を遂行していた。具体的には主に薬剤報酬の計算を行う薬剤管理システムと、患者の情報を管理する薬歴管理システムの2つがあった。
特に後者の薬歴管理システムは重要で、患者の生年月日などを入力すると過去の来局情報や処方内容を呼び出すといった機能を保持していた。処方内容が過去と同一である場合は、簡易な方法で処方処理できるようにする機能もあった。
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