訴訟に至るようなITトラブルを防止するためには何を行うべきか。今回は、販売管理システム開発契約において、受注者が発注者の要求を正確に把握せず、要求に満たないシステムを開発したため、納入されたシステムに契約の目的を達しない重大な瑕疵があるとして契約解除が認められた事例を取り上げる。訴訟になった多くのケースに共通することだが、やはり要求定義がキーポイントになっている。
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まずは今回取り上げる事例の経緯を概説する。発注者はコンピュータ・ハードウェアとその周辺装置を販売する会社である。マッキントッシュに市販の販売管理ソフトをインストールして使っていたが、一括の在庫引当および納期回答はいずれも手作業で行っており、特に一括在庫引当については1日1回、2名で約1時間を要していた。
そこで在庫引き当て機能を備えた販売管理システムを構築すべく、ベンダーAにシステム開発を依頼したところ、発注者のシステム環境(サーバー、DB、クライアント、開発ツールなど)により適した開発会社であるという理由から、ベンダーB(受注者)を紹介された。「発注者のシステム環境」という部分が分かりにくいが、Oracle製品を使うのが前提だったようである。このベンダーBが今回の訴訟相手となる。
発注者はまず、ベンダーBに対して上記のシステム稼働環境について概略を説明し、大まかな開発費用の見積りを依頼。約2カ月後、見積書の提出を受けた。同見積書において納期は5カ月後とされており、これを前提に開発委託契約が締結された。ベンダーBは、第三のベンダーCと本件システムの開発作業を分担することを提案し、発注者の了承を得た。
発注者は開発ツールとしてOracle PowerObjectsを採用する予定だった。しかし、ベンダーBがこれを評価したところ、バグが多く開発ツールとしては不適当(時期尚早)という結果になった。最終的に、ベンダーBとベンダーCはOracle PowerObjectsではなく、C言語による開発を決定。かつ評価などに時間を要したことから、納期を3カ月延期することを提案、了承された。
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