訴訟に至るようなITトラブルを防止するためには何を行うべきか。今回は、受注者側のオーバーコミットにより、機能が実現しなかったために訴訟になった事例を取り上げ、発注者によるベンダー提案の実現性の吟味の重要性をお伝えしたい。

今回の事例は、財務分析システムの改良を行うシステム開発において、プロジェクトが遅延を重ね、開発を請負った業者が目的の機能を実現できずに、発注者が契約を解除。支払った代金の返還等を求めて訴訟し、それが認容されたものである。(東京地判平19・12・4)
プロジェクトの経緯は以下の通りだ。
発注者は、企業や個人事業者に対して、経営、会計、事業承継、税務などに関する総合的なアドバイスやコンサルテーションを提供する会計事務所である。同事務所は、インターネット上で企業の財務状況の分析を行うシステムを保持していた。システムのユーザーは、発注者の会計事務所グループに所属する会員会計事務所をはじめとする約60の会計事務所と、約40のクライアント企業である。
例えば、会員である会計事務所のクライアント企業が過去の財務諸表データを入力すると、安全性や収益性の視点から格付け評価を行ったり、財務上の改善点を表示したりする機能を有していた。会員である会計事務所がクライアントに対してワンポイントアドバイス行える機能も備えていた。もちろん発注者自身のクライアント企業にもこのシステムをサービスとして提供していた。
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