訴訟に至るようなITトラブルを防止するためには何を行うべきか。今回は、ソーシャルネットワーキングシステム(SNS)の納入が大幅に遅れた事例を取り上げる。もともと厳格に納期を定めたわけでもなく、また発注者から受注者に対する明確な仕様伝達もしくは仕様を決定する協議も行っておらず、納入後にトラブルとなった事例である。
発注者は宝石・貴金属・リトグラフの代理販売をする会社である。発注者はベンダーに対し、ホームページ上で展開するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の製作業務を委託し、ベンダーはこれを請け負った。製作開始時に製作費の半額を支払い、残額は本件SNS引き渡し時に支払う契約である。
納期は8週間後だったが、納期時点ではSNSは未完成だった。ただし、それ以降もSNSの製作上のやりとりが行われており、また発注者からも納期遅延に対する指摘は行われなかった。
納期から約半年遅れて、受注者から発注者に対して、SNS作成の完了報告が行われ、その後、修正要請の対応と完了、および当初予定されていた全工程の完了の報告が行われた。受注者はメンバー検索やチャットといった主要機能を本サーバーにアップロードし、機能説明・利用規約といった残る機能については残金受領後に本サーバーにアップロードする旨を伝達した。
しかし約1カ月後、発注者は請負代金の一部を支払ったものの、利用規約、モバイルサイト、課金システムの製作が不十分であり、本件SNSが未完成であること、および履行遅滞などを理由として本件契約の解除通知を行った。受注者は発注者の主張を不服とし、残代金の支払いを求めて提訴した(本訴)。これに対し発注者は、既払い金の返却を求める訴えを起こした(反訴)。
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