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世界と戦う“ホンダ流グローバルIT構築”の凄み─グローバル最適生産を支えるITのあり方とは?

CIO賢人倶楽部のグローバルシステムセミナーから【前編】

2014年3月5日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

2014年2月27日、「世界で勝つグローバルシステムの要諦」(CIO賢人倶楽部/レイヤーズ・コンサルティング共催)というセミナーが開催された。今回は、本田技研工業・IT本部の有吉和幸氏が基調講演で語った内容を紹介する。

「システムを上手く作る」から「競争力貢献」へ

一方、ホンダ本社におけるIT部門の変革も進めている。「2005年頃までは、事業部門などの要求に応えるのが最優先課題でした。ですからIT部門の意識は言われた通りにシステムを作る、いわば請負体質でした」。提案したり、共同で作る意識が薄いので業務知識などのスキルの空洞化が起き、できて当たり前なのでIS部門スタッフの満足度も低下傾向だったという。「ユーザーからはアドバイスがない、経営からはITは分からないと言われていました(笑)」。

そこで2005年、それまでのテーマ遂行型組織から現場接点重視型組織に再編した。「ポイントは請負体質からの脱却とスキル空洞化の阻止です。開発効率向上への取り組みから、開発目的達成への取り組みでもあります。2006年には『IT 2020ビジョン』を作り、個別のシステム開発やプロセス改革ではなくて、企業競争力に貢献することを宣言しました」(図3)。有吉氏は、この時期の変革を“原点回帰”と表現する。「ITは何のためにあるのか。原点はシステム開発ではなく、競争力強化でしょう。そのためのガバナンスの発揮であり、全体最適を現場最適にする取り組みだと考えました」。

図3 個別システム開発から顧客視点でのプロセス最適へ

しかし「企業競争力に貢献する」と宣言しただけで、それを実現できるわけではない。ホンダとしては、部品をどの国のどんな企業や工場から仕入れればいいか、それを使ってどこで生産するべきか、生産量をどうコントロールするかなどを、為替変動や工場の生産能力の変化や、場合によっては自然災害のようなインシデントにも対応して見出す必要がある。

前述したように、例えば日本で基幹部品を製造し、消費国もしくはその近隣諸国で生産する単純なモデルに比べ、モノの流れは飛躍的に複雑になる。「同時に各国のニーズを反映した車作りも必要です。最適解を求めるにはまず、情報の精度を高める必要がありました」(図4)。文字通り、複雑な多元連立方程式を解く必要があり、それを可能にするITが求められたのだ。

図4 グローバル経営をサポートする情報活用のイメージ

「絵に描くと、情報を集めてグローバル情報DBを作ればいいことになるし、作るための市販ソフトウェアがあることも確認しました」というが、それでは済まない問題があった。データに関わることである。「2011年にシステムを精査したところ、必要なデータがないことが分かりました。例えば取引先コード。日本とタイ、米国の生産拠点ではコード化の方法や、取引先管理の精度が違うんです。それぞれのローカルでは何の不都合もないのですが、グローバルでと考えるとそのままではどうしようもありません」。

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