[調査・レポート]
グローバルシステム構築は、こう挑め!─CIOの役割からソーシング、人材育成まで
2014年3月6日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)
2014年2月27日、「世界で勝つグローバルシステムの要諦」(CIO賢人倶楽部/レイヤーズ・コンサルティング共催)というセミナーが開催された。今回は、レイヤーズの有川氏による「グローバルシステム構築の要諦」と、ノバルティスファーマ、東レ、本田技研工業、それにCIO賢人倶楽部会長によるパネルディスカッションの内容を紹介する。
パネルディスカッション
最後にパネルディスカッションについて、各パネリストの発言要旨を紹介する。パネリストはノバルティスファーマの深作祐子氏(情報システム事業部マーケティング情報システム推進部長)、東レシステムセンターの重松直氏(顧問)、本田技研工業の有吉氏、それにCIO賢人倶楽部会長の木内里美氏である。司会はレイヤーズの有川氏が務めた。
テーマは(1)グローバルシステム構築とCIOの役割、(2)開発、運用ソーシングの方法、(3)IT組織とIT人材育成である(以下、敬称略)。少し読みにくいかも知れないが、経験豊富なパネリストばかりとあって含蓄に富んでいる。
写真1:熱い議論が交わされたパネルディスカッション
(1) グローバルシステム構築とCIOの役割について
深作:ノバルティスでは、CIOはすでにIT部門のトップではない。プロセスの標準化を担っており、業務の変化を引き起こす役割を持つ。だからITではない。グローバルシステムを構築する場合にも、ビジネスかITかで対立するのではなく、CIOがリードする。当然、経営層や事業部門とのコミュニケーションを進めるのも、CIOの重要な役割の1つと認識されている。
例えば日本に何らかのシステムを展開する際、なぜ標準化が必要か、なぜこのITが大事かを日本側に理解させる必要がある。そのために事業部門のトップを集めて、ワークショップを主催することも多い。こう良くなるという夢を語る役割と言える。
重松:CIOに求められるのは、構想力と包容力の2つがある。構想力は方向を決めること。東レの場合、素材は地産地消がポリシーで、そのため(集権型ではなく)連邦型の経営を行っている。実際、海外の関係会社はフィルム製造など“ミニ東レ”だし、買収した会社もある。こうした多様な状況を踏まえつつ前に進めるには、各社の状況を把握し、方向を決める構想力が欠かせない。
一方で何か新しいことをやると、技術面でも人の面でも色々な問題が出てくる。ぶれないように土台、つまり評価基準を持ちながら、全体をまとめる包容力が必要になる。70点でも進めることと、90点でないと進められないことをどう区別するか。リスクを予知したり、二の矢、三の矢の用意も求められる。
有吉:ホンダにおけるCIOの役割は先ほどお話ししたように、全体最適側にある。例えば、ITの役割について「経営を支援する」といっているようではダメだ。ITは経営そのものであるという意識が大事になる。ITの責任者よりも1つ高い立ち場で、ITを考えるのがCIOだと思っている。
木内:CIOの役割は時代、環境で変わる。経営からの要求が、デジタルマーケティングやグローバル対応など今、より経営視点でのITに変わった。だからCIOも従来に比べ、業務改革、経営改革に関与する割合が増えている。おおむねバックオフィスのシステムは終わり、お金を稼ぐ側にシフトしている。営業やマーケティング、あるいは生産管理ではなくて、生産そのものへと、言った具合だ。結果、活動範囲が広がって、知人のCIOも海外に出かける人が激増している。しかも、しょっちゅう行っている。グローバル化の時代、CIOはどんどん経営密着になりつつある。
有川:皆さんの会社のCIOも海外にはよく出かける?
深作:Web会議などでもある程度対処できるが、フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションを重視しているので、その通りだ。
重松:私の経験でもYesだ。各国持ち回りで、年に1回はアジア。システム会議などを開催していた。昨年から欧州や米国でも同様なことをスタートし、年1回は直接会って話をし、目標を確認するなどしている。
有吉:ISマネジメントボードの話を少しすると、以前は半年に1回、日本に集まって各国の事情を報告する場だった。最近は地域の課題を解決する場に変わってきた。ただし、各国の責任者全部が集まるわけではない。事前にテレビ会議などでで課題を洗い出し、集まるのは関係者のみにしている。
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