今や、モバイル活用は企業ITの最重要テーマの1つ。しかし、モバイルアプリの開発にはまったく土地勘がないという読者も多いのでは。分からないことは先達に尋ねるのが一番だ。本連載では、ニフティ、はてな、GREEでコンシューマー向けサービス開発の最前線に立ってきた伊藤直也氏に、モバイルアプリ開発の定石を聞く。(緒方 啓吾=IT Leaders編集部/監修:伊藤直也)
「ワンソース・クロスプラットフォーム」にはデメリットもある
両者の違いを無視して、同じデザインを当てはめると、不自然なアプリが出来上がる。例えば、iOS向けに配置した「戻るボタン」は、Androidでは無用の長物となってしまう。iOSの更新時のインタラクションを、Androidで再現するのは難しい。ユーザーの満足度を高めるためにしのぎを削るモバイルアプリの世界で、こうした不自然さは命取りになりかねない。
ユーザーの支持を獲得するためには、iOSならObjective-C、AndroidならJavaを使って、個別にネイティブアプリをデザイン、開発するのが王道である。2つのOS向けに別々にコードを書くのは大変だと思われるかもしれない。しかし、iOSもAndroidも、開発の生産性を高めるための工夫を重ねている。最近は、スクリプト言語を書く感覚でアプリを開発できる。
上記の理由から、「ワンソース・クロスプラットフォーム」のアプローチにも慎重であるべきだ。これは開発ツールを使って、1つのソースコードから、異なるプラットフォーム向けにアプリを生成するというもの。確かに、開発側からすると、コードを書く工数は減るので、メンテナンスなどは楽になる。しかし、iOSやAndroidの本質的な違いを埋めることは難しい。
監修者プロフィール
伊藤直也(いとう なおや)
ニフティ、はてな(取締役 最高技術責任者)、グリー(ソーシャルメディア統括部長)を経て、2012年4月よりフリーランス。ブログやソーシャルブックマーク、モバイルアプリなど消費者向けサービスの開発・運営に一貫して携わる。現在はWebサービス事業者やシステムインテグレーターへのアドバイザリー業務なども行う。著書に『入門Chef Solo』(Kindle Direct Publishing)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』(いずれも技術評論社)などがある。
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