[愛されるモバイルアプリを作るための7つの質問]

モバイルアプリの一般的なシステム構成は?:第6回

2014年3月28日(金)緒方 啓吾(IT Leaders編集部)

今や、モバイル活用は企業ITの最重要テーマの1つ。しかし、モバイルアプリの開発には全く土地勘がないという読者も多いのでは。分からないことは先達に尋ねるのが一番だ。本連載では、ニフティ、はてな、GREEでコンシューマ向けサービス開発の最前線に立ってきた伊藤直也氏に、モバイルアプリ開発の定石を聞く。(緒方 啓吾=IT Leaders編集部/監修:伊藤直也)

Q6:モバイルアプリはどんなシステム構成をとるのか?

A:システム全体のアーキテクチャは、Webアプリケーションとよく似ている。「MVCモデル」をとるのが一般的だ。画面表示を担う「ビュー」、処理の中核を担う「モデル」、両者をつなぐ「コントローラー」で構成する。

 ただし、通常、モデルが担当する処理の一部、具体的には、トランザクションなどの処理をバックエンドサーバーに任せるケースが多い。サーバー側にAPIを用意して、アプリから呼び出す。

図1:モバイルアプリのシステム構成例

 アプリの開発、運用基盤に、クラウドサービスを積極的に取り入れるのが、モバイルアプリ開発のトレンドだ。例えば、バックエンドサーバーや、データベース、認証基盤などをAmazon Web Servicesに置く。バックエンドが複雑でない場合は、セールスフォースが提供する「Heroku」など、アプリケーション運用基盤を利用することもある。

 もちろん、既存の基幹システムと連携させるアプリもある。この場合、中継サーバーを介して、アプリから基幹システムに接続する。基幹システム側にデータをやり取りするためのインタフェースを追加することになる。

 今後、普及が進みそうなのが、BaaS(Backend as a Service)である。データやファイルの保持、ユーザー認証、プッシュ通知など、サービスを運営するために必要なバックエンドの機能をサービスとして提供する。開発者がサーバーを用意して、データベースをインストールしたり、認証ロジックを構築したりする手間を省ける。BaaSによっては、ユーザーの位置情報を取得したり、アプリ内で課金したりするためのAPIも提供する。

開発、運用を支援するクラウドサービスも積極採用

図2:クラッシュレポート機能を提供する「Bugsense」
図2:クラッシュレポート機能を提供する「Bugsense」

 開発ツールもSaaSで賄える分野が増えてきた。例えば、「BugSense」は、クラッシュレポート機能を提供するサービス。アプリが異常終了した際の情報を収集し、開発者にメール送信する。使い方は簡単。アプリのエラー処理のロジックを書く際、ライブラリを呼び出すだけだ。

図3:性能モニタリング機能を提供する「New Relic」
図3:性能モニタリング機能を提供する「New Relic」

 「New Relic」は、パフォーマンスをモニタリングするサービスである。アプリでライブラリを呼び出しておくと、レスポンスにどれくらい時間がかかっているか、何がボトルネックになっているか、といった情報を自動的に収集する。統計情報をWebサイトで閲覧できる。UI改善に欠かせないツールの1つである。

 こうした機能を自分たちで一から作りこむには時間がかかる。クラウドサービスの充実は、アプリ開発の生産性を高めている。最近のアプリ開発チームは、自社でサーバーを一切持たず、開発環境、本番環境ともクラウドで賄っていることも珍しくない。オフィスあるのは、従業員のPCだけ。非常に身軽である。

監修者プロフィール

伊藤直也(いとう なおや)
ニフティ、はてな(取締役 最高技術責任者)、グリー(ソーシャルメディア統括部長)を経て、2012年4月よりフリーランス。ブログやソーシャルブックマーク、モバイルアプリなど消費者向けサービスの開発・運営に一貫して携わる。現在はWebサービス事業者やシステムインテグレーターへのアドバイザリー業務なども行う。著書に『入門Chef Solo』(Kindle Direct Publishing)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』(いずれも技術評論社)などがある。

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