今や、モバイル活用は企業ITの最重要テーマの1つ。しかし、モバイルアプリの開発には全く土地勘がないという読者も多いのでは。分からないことは先達に尋ねるのが一番だ。本連載では、ニフティ、はてな、GREEでコンシューマ向けサービス開発の最前線に立ってきた伊藤直也氏に、モバイルアプリ開発の定石を聞く。(緒方 啓吾=IT Leaders編集部/監修:伊藤直也)
Q3:今一つ、アプリが使いづらい。デザインは洗練されているのだが・・・
A:ユースケースの設計が適切でない可能性がある。ユースケースとは、利用シーンを明確化すること。自分たちが作るアプリは、「誰が」「どんな時に」「どんな目的」で利用するのか。ユーザーの目的を達成するために、アプリがどんな機能を備えるべきかを考える。
ユースケースが曖昧だったり、ユーザーの実態とかけ離れていたりすると、いかにグラフィックデザインや、UIデザインが洗練されていても、”使いどころに欠ける“アプリになってしまう。実際に、そうしたアプリは珍しくない。UIやグラフィックデザインと違って目に見えないが、アプリの成否を左右する重要な要素である。
モバイルアプリのユースケースを設計する上で、特に注意すべきは、PCとモバイルが全く違うデバイスであるという点だ。ハードウェアの性質や、制約が異なる。利用シーンや、やりたいことも違う。単純にPC向けアプリケーションの画面を、モバイル向けに書き換えるだけでは、使いやすいアプリにはならない。
PCは画面が大きく、一度に多くの情報を表示できる。複数のアプリケーションを切り替えながら使うことも普通だ。キーボードがあるので、入力作業が苦にならない。マウスやショートカットを使えば、多数のメニュー項目が並んでいても、問題なく操作できる。
一方、モバイルは、画面が小さく、一度に表示できる情報は少ない。タッチ操作のため、長文を入力したり、複雑な操作をしたりするのも苦手だ。複数アプリを切り替えて使うことも想定していない。その代わり、常に持ち歩けるし、場所を選ばず、サッと取り出して、すぐに使える。
当然、利用シーンも異なる。PCを利用するのは、自宅やオフィス、喫茶店など、腰を落ち着けられる場所だろう。PCの前に座るとき、ユーザーはある程度の時間をとることを想定している。
一方、モバイルを使うのは、主にスキマ時間である。例えば、電車に乗っている時、行列に並んでいる時、あるいは、友人と会話している時もあるかもしれない。いずれもPCを使う時より、ずっと短い時間である。その限られた時間内で、ユーザーは目的の達成を望む。
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