[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

CIOの役割再定義と、日本企業が直面する全体/個別最適のジレンマ─改めてCIOの役割を考える[前編]

イノベイトラボ 代表 矢澤篤志氏

2025年9月17日(水)CIO賢人倶楽部

CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、イノベイトラボ 代表 矢澤篤志氏からのオピニオンの前編である。

 2025年1月に43年間勤めたカシオ計算機を卒業した筆者は、今回フリーの立場で本コラムを執筆する機会をいただきました。何を書くか少し悩みましたが、CIO賢人倶楽部にとって“ど真ん中”のテーマである「CIOの役割」について取り上げることにしました。実はこのテーマには長年、真剣に向き合ってきた経緯があります。そのせいか、筆を進めるうちに思いが溢れ、規定の文字数を超えてしまいました。そこで前後編の2部構成でお届けします。最後までおつきあいいただければ幸いです。

2010年に策定した「CIOの役割」をチェックする

 「CIOの役割」は古くて新しい、そして常に議論されるべきテーマです。筆者は2008年、経済産業省が主催したCIO戦略フォーラムにてCIO育成カリキュラム策定委員会に参画し、「目指すべきCIO像」と「カリキュラム案」の策定(2010年)に携わりました。目指すべきCIO像の中で策定された役割定義は「政府CIOポータル」に掲載され、広く参照されています(図1)。カリキュラム案も現在は日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「イノベーション経営カレッジ」へ引き継がれ、数多くのCIO輩出に貢献しています。 

図1:目指すべきCIOの役割(出典:政府CIOポータル)
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 そこにはCIOが担うべき普遍的な役割が整理されており、策定から15年を経た今見直しても違和感はありません。しかしこの間、クラウドやモバイル、AIを中心にデジタル技術の革新が進み、地球環境の変動や少子高齢化など経営環境も激変しています。企業の経営層ではCDO(Chief Digital OfficerおよびChief Data Officer)、CTO、CISOなど新たなCXOが台頭しました。それに伴い、CIOが担うべき役割は曖昧さ、複雑さを増しています。

 この現状を踏まえ、多くの企業が直面する課題を紐解きながら「今、本当に求められるCIOの役割とは何か」を考えていきます。

●Next:欧米におけるCIOの役割と、日本のCIOが担う役割や優先すべき課題

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