「Software Defined Network」に限らず、ソフトウェアによるストレージ環境やネットワーク環境などの制御が着実に広がりつつある。そんな中、今度は「Mobility Difined Network」という概念が登場した。提唱したのはWi-Fi無線LAN機器の大手、米アルバネットワークスである。
「今や一人が2台、3台のモバイル機器を使う時代であり、モバイルを駆使する『GenMobile(モバイル世代)』が企業の主力を占めるようになりつつあります。仕事をする場所もオフィスから自宅や出先に変わる。ですから有線の電話やLANの時代は終わりをつげ、Wi-Fiが企業や組織のネットワーク網の中核になるでしょう」(米アルバネットワークのジョン・ディルーロ同社上級副社長)。
米アルバによれば、「Mobility Difined Network」という言葉は、単なるバズワードやキャッチフレーズではない。「モバイル機器の普及が、企業ネットワークにゼロベースの見直しを迫るという、ある種のパラダイムシフトを表しています」(同)という。その根拠として、米国電気電子学会(IEEE)が2014年1月に正式承認した無線LAN(Wi-Fi)規格、「IEEE 802.11ac」を挙げる(関連記事)。
IEEE 802.11acの通信速度は、理論上6.9Gbpsと高速だ。「ビームフォーミング」と呼ばれる技術により、電波の到達距離を大幅に伸ばせるポテンシャルを備える。理論と現実は大きく異なる場合が多いにせよ、Wi-Fiの性能が大幅に高まることは、確かに企業のネットワークを大きく変える可能性をもっている。
アルバは、単にMobility Difined Networkという概念を提唱しただけではない。これを具現化するものとして、屋外用アクセスポイントの新製品「ARUBA270シリーズ」と、Mobility Difined Networkの管理ツールを発表した。270シリーズは、写真にあるように対天候性を高めた製品だ。企業内LANの置き換えに適した屋内設置用としては、220シリーズという別製品がある。
一方、管理ツールは、(1)マイクロソフト「Lync」などモバイル機器による利用が想定される1500以上のアプリケーションに対し、ポリシーによる制御やQoS(Quality of Service:サービス品質)を設定できるモビリティ・ファイアウォール、(2)通信状況を視覚的に管理するためのダッシュボード、(3)Salesforce.comのようなアプリケーションへのサインオンを容易にする自動サインオン、など5つの機能を備える。社員向けの接続と、BYOD(Bring Your Own Device)のデバイスやゲスト回線を明確に区別することもできる。アクセスポイント機器だけでなく、トータルな運用をサポートするツールを提供しているわけだ。
Mobility Difined Networkという概念をどう評価するかは別にしても、タブレット/スマートフォンをはじめ様々な無線デバイスが登場し、普及しつつあることは確か。それに合わせて有線LANを前提に構築されてきた企業ネットワークを見直すべきという考え方は、複雑さを排除するという意味でも一聴に値すると言えるだろう。