2020年を見据えた「グローバル企業のIT戦略」を取り上げる本連載。IT戦略における日本と世界の差異を見極めるための観点として、第5回では、IT戦略を打ち立てるなかで、国民性がどう影響するかについて考察した。今回は、クラウドの時代に望まれる組織のあり方について考えてみる。
人材の密度とは、ビジョンや目標、経験、センス、スキル、スピリット、人柄、ITリテラシ、語学力などである。なので、たとえトップでなくても、影響力が強い人を採用すると組織は変わる。だからこそ、採用する側は、自分よりも優秀な人を採るべきである。
よく聞く話だが、Bランクの人は、扱い易さから、自分より下のCランクの人を採ろうとする。だが、Aランクの人は、自分より上のA+ランクの人材を獲得しようとする。衝突解析の考えでいえば、Cランクでは組織に影響を全く与えないが、A+ランクならトップと同等に組織を変えられる。
(2)ボトムアップで意見を収集し、マネジメントが参考にする
マネジメント層は意外と現場のことを理解していない。現場の本音を引き出せれば、マネジメントの意思決定次第で組織を変えることができる。
ボトムアップに意見を集約するためには、「Brain Writing(ブレイン・ライティング)」という方法を推奨したい。関係者が複数人集まって、あるべき組織の姿を「書く」ことで創造する。
一般によく実施されるブレイン・ストーミングでは、声が大きい人、役職が上の人の意見が通りやすいだけでなく、言い放して終わるケースがほとんどだ。これに対し、アイデアを書き出すBrain Writingでは、組織全員が同じ立場で、同じ機会をもって参加できる(図2)。
Brain Writingの進め方はこうだ。まず、大きいサイズのポストイットに各人がアイデアを書き出し、それを他の人に回す。ポストイットを受け取った人は、そこに書かれている内容を参考にしながら、新たなアイデアを書き足していく。1時間もすれば、100個程度のアイデアが出てくる。
みんなが出したアイデアについて、参加者全員が平等に、重要度、緊急度、実現可能性の3項目で採点・評価する。時間がなければ、重要度だけで評価してもかまわない。こうして得られた結果を忠実に守れば、組織は変わっていく。
有効な結果を抽出するためには、ファシリテータの力量が問われるのも事実である。ただ、筆者がファシリテータを務めた経験からいえば、出された結果そのものよりも、Brain Writingというセッションを実施すること自体が、組織を確実に活性化させる。
(3)トップダウンでITリテラシの高い組織に集約する
最近は日本企業が、欧米やアジアの会社を買収するケースが少なくない。その際、従来のITシステムを割り切って捨ててしまい、買収した子会社が採用しているITシステムを採用し、ITリテラシが高い組織へと全体を集約しているという考え方も必要である。
ITリテラシを基準にすれば、買収した欧米企業のほうが高いケースは少なくない。例えば欧州企業の場合、独SAP製のパッケージをトップダウンで導入し、ITガバナンスを効かせる方法が主流である。そこでは、ボトムアップ型で導入した日本のITシステムやITガバナンスはローカルな仕組みとして、グローバルな考え方からは、残念ながらかい離していることになる。
クラウド・コンピューティングにおいても、欧米企業はパブリック・クラウドをどんどん使っている。だが日本では、プライベート・クラウドへのこだわりが、まだまだ強い。こうした考え方の違いがある限り、日本企業が海外に子会社を持った場合、組織としての扱いに困るケースは少なくなってはいかないはずだ。
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