[大元隆志のウェアラブル・ビジネス活用最前線]

Google Glassに先駆けて発売した国産スマートグラス「MOVERIO BT-200」

2014年6月16日(月)大元 隆志

スマートグラスと言えばグーグルグラスの話題に集中しがち。だが、グーグルよりも早くこの市場に参入していた企業が日本国内に存在する。セイコーエプソンだ。2011年にAndroid2.2を搭載したスマートグラス「MOVERIO BT-100」を発売。今年1月には、Android4.0に対応した最新版「MOVERIO BT-200」を発表した。6月から国内販売を開始する。強みは、液晶プロジェクターで培った技術。ARの映像美を追求する。同社の担当者に取り組みを聞いた。

両眼型スマートグラスにこだわった理由

 単眼タイプと両眼タイプでは、映像の見やすさが違います。理由は2つあります。1つは映像サイズ。単眼タイプは、映像サイズが小さくなりがちです。目を凝らして見ないといけない場合も少なくない。両眼タイプは映像を大きく表示できます。映画を見ることも可能です。

図:MOVERIOで閲覧できる画面サイズのイメージ(同社製品サイトより引用)図:MOVERIOで閲覧できる画面サイズのイメージ(同社製品サイトより引用)
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 ディスプレイの見やすさやサイズは、デバイスの可能性を規定する重要な要素です。例えば、折り畳み式の携帯電話の背面にサブディスプレイが付いていましたよね。時刻や着信を確認できたので便利ではありましたが、あくまで補助的なものでした。映像サイズの小さい単眼タイプもまたスマートフォンなど、他のディスプレイの補助的な存在となるでしょう。

―視線の移動がないのも良いですね。私もいくつかの単眼タイプを試しましたが、継続して情報を閲覧するのには不向きだと感じていました。単眼タイプの多くは、片目の上部にディスプレイを配置しています。前方とディスプレイの間で視線を行き来させることになる。一時的に情報を確認する程度ならともかく、AR(Augmented Reality;拡張現実)だと厳しい気がします。

 まさにその点が重要です。両眼タイプが見やすいもう1つの理由はそこにあります。ご指摘の通り、単眼タイプは、どうしても視線移動が多くなりがちです。少し、スマートグラスとは話がずれますが、最近のクレーン車の一部は、運転席に操作指示を表示するための小型ディスプレイを設置しています。ただ、前方とディスプレイを交互に見なければならない。

 ディスプレイを両眼タイプのスマートグラスに置き換えるとどうでしょう。運転手の視野に情報を重ね合わせられるので、前方に集中できます。作業ミスが減り、安全性と効率性を高められます。実際に、視線移動の削減に価値を感じて問い合わせが増えています。

―ところで、実際には左右の目はそれぞれ違うディスプレイを見ているのに、まるで1つのディスプレイを見ているような感覚です。これは簡単なようでいて、難しいのでは? 両目で見たときにピントが合うよう、2つの映像を調整して配信しているわけですよね。

 おっしゃる通りです。基本的に単眼タイプは、映像の同期を考える必要がありません。一方、両眼タイプは、2つの画面を同時に、しかもピントが合うよう表示しなければなりません。

 実は、ここに当社の強みが生きているのです。私の所属する事業部はプロジェクター開発を長年続けてきました。実は、プロジェクターは三つのディスプレイの情報を重ね合わせているのです。この技術を応用して、二つの映像を1つに重ね合わせています。

 実は、MOVERIOの企画を2009年に始めた時、単眼タイプも検討しました。ただ、まずは両眼タイプから作り技術的なアドバンテージを確立させようという流れになりました。もし単眼タイプの市場が急速に立ち上がったら、片側の部分だけを残して製品化すれば良いと考えました。

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