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[ITリーダーの美学]

グローバルIT戦略に日本流の強みを活かす─コニカミノルタ 田井昭氏

2014年7月1日(火)川上 潤司(IT Leaders編集部)

世界中でオフィス業務を支える複合機(MFP)やデジタル印刷システムなどを主力製品とするコニカミノルタ。顧客に価値を提供すべく全社一丸となって事業を繰り広げる上で、その根幹を支えるのがグローバルIT戦略だ。製品のR&Dに長年関わりながら培った「世の変化を読み取る眼」を活かし、変革を牽引している田井昭氏に、IT戦略にかける思いを聞いた。(聞き手は、川上潤司=IT Leaders 編集長)。 写真◎赤司 聡

コニカミノルタ 田井 昭 氏 

30年以上に及ぶR&D人生を経てIT部門へ異動

田井さんは、IT部門を担当されて長いのでしょうか。

 いえ、私は根っからの技術屋で、MFP(Multi-Function Printer:複合機)などオフィス機器のR&Dを30年くらいやってきました。IT業務改革部に移ったのは2011年ですから、まだ3年くらいです。もっとも、近年のオフィス機器はデジタル化が進んでいるため決してITとは無縁ではなく、ソフトウェア開発もかなり手がけてきました。

ちなみに、どんなソフトウェアですか。

 MFPのネットワーク化が大きく進んだのは2000年頃だったかな…。本体スペックの強化もさることながら、業務システムと連携するワークフローなどの周辺ソフトウェアの重要性が高まってきたことを受け、当社も総力を挙げて開発に取り組みました。様々なお客様のIT部門に、我々が開発したソリューションを売り込みにも行きましたよ。

まさか自社のIT部門を統括する立場になるとは思っていなかったとか。

 まったく、予想もしていませんでした。

それがまた、どんな経緯で?

 製品開発部門で私の上司であった杉山高司(現 専務執行役)が、IT担当役員になり、嘘か本当かはわかりませんが、「俺一人で行くのは嫌だから、田井も一緒に連れていこう」ということで決まったようです(笑)。

実際に移ってきてみて、自社のIT部門はどんな印象でしたか。

 かつていた事業部門に比べると、新しいことにチャレンジする意気込みが弱いように感じたのが正直なところです。ビジネス現場は常にアグレッシブです。新しい市場を開拓し、需要を拡大していくためには、最新のITもどんどん取り入れていかなければなりませんから。

 ところがIT部門は、システムが障害を起こすことを極端に恐れるのです。問題なく動いているのであれば現状を変えようとしません。ITサービスを安定供給することが最優先ですから考え方としては正しいのですが、それだけでは今の時代はちょっと厳しいかな、と。

 例えば、先に申し上げたように、主力の1つであるMFPの事業では、お客様のIT部門に対して新しいソリューションを提案しています。お話を持って行く我々自身のIT活用が時代遅れというのでは、まったく説得力がありませんよね…。常に一歩先を行く気概がないと、パートナーとして認めてはもらえません。

 無駄な投資やトラブルといったリスクはあるにせよ、新しい技術を積極的に取り入れ、成果を上げていく実例を社内外に示すことが、ひいては本業のビジネスを成長させていくことにつながっていくのです。

グローバル標準のBPMを構築し、各国のシステムを統合

社内ITの変革に向けて、現在はどんなことに取り組んでいるのですか。

 2012年3月期からスタートした中期経営計画「Gプラン2013」の中に「真のグローバル企業にふさわしい経営基盤の構築」というテーマがあり、それを支えるべくグローバルIT戦略を進めています。

オンプレミスで運用してきたシステムをクラウドに移行し、ERPの標準化・統合を進めていると聞きました。

 おっしゃる通りです。当社では早くからグローバル共通のERP基盤としてSAPを導入していましたが、実は国ごとにカスタマイズされた多数のインスタンスが乱立していたのです。これではガバナンスを効かせることができず、ビジネス環境の変化にも迅速に対応できません。そこでグローバル標準を策定し、統合することにしました。

最終的にはシングルインスタンスに集約するのですか。

 シングルインスタンス化を考えなかったわけではないのですが、それにも弊害はあります。例えば、メンテナンスなどで計画停止を行うと、必ずどこかの国のビジネスタイムに重なってしまいます。そこでデータセンターをヨーロッパ、アメリカ、アジアの3極に分け、SAPのインスタンスもそこに収斂していくことにしました。

 間違ってはいけないのは、乱立しているインスタンスを1つに統合すること自体が目的ではないことです。ITを効率化し、コストを下げていくためにより重要なポイントは、マスターデータの統合にあります。その基盤のもとでグローバル標準のBPM(ビジネスプロセス管理)を運用し、各国のシステムを巻き取っていくことで、我々の目的は十分に達成することができます。

現在の進捗状況はいかがですか。

 グローバル標準のBPMは稼働を開始し、すでに日本をはじめ4カ国のシステムがそこに統合されています。年内に2カ国が加わる予定です。

BPMの標準化は、具体的にどんな方針で臨んでいるのでしょう。

 国ごとに異なる法規制や税制などのローカル要件を洗い出し、それ以外はすべてグローバル標準のビジネスプロセスに従うことを徹底しています。標準化率は90%を超えているので、まずまずの成功と考えています。こうした取り組みはスタートが肝心です。対応しなければならないローカル要件は、いやがおうにも後から次々に湧いてきますので、最初にしっかり押さえこんでおいたほうがよいのです。

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