「ものづくり先進国」を掲げる日本の製造業に、変革を求める風が吹いている。製品の利用体験を顧客に提供する「サービスファースト」の考え方が広がってきたためだ。本連載では、これまでの「ものづくり」中心から、利用体験価値を提供する「ことづくり」への変革に向けて、製造業がどんなサービス提供モデルを確立するべきかを考えていく。前回は、現状最も一般的な「Break/Fixモデル」を取り上げた。第2回は、それに続く「Preventive Maintenanceモデル」を解説する。

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製造業の「サービスファースト」を考えるために、前回は現時点で最も一般的なBreak/Fixモデル」について解説した。そのBreak/Fixモデルの先にあるサービスモデルが「Preventive Maintenance(予防保守)モデル」である(図1)。Break/Fix モデルの「壊れたら直す」に対し、Preventive Maintenanceモデルは「壊れる前に取り替える」だ。製品を販売するメーカーが保守を請け負うことになる。
「壊れたら直す」に対する利用者の不満から誕生
Preventive Maintenanceモデルのサービスは、Break/Fixモデルに対する利用者の不満から生まれている。Break/Fixモデルにおける基本的なサービス提供の仕組みでは、利用者が製品の不具合を見つけ、利用者が販売店やメーカーに連絡する。それを受けてメーカーや販売店は初めて、修理技術者を必要に応じて派遣する。製品によっては、利用者がサービスセンターに故障した製品を持ち込むこともある。このプロセスには、利用者の視点から見れば、色々と不満が出てくる。
1つは、製品の不具合を発見してから、その製品が再び利用できるようになるまでに時間がかかることである。メーカーは利用者からのクレームを受けてから故障を診断し、交換部品を引当て、修理技術者を手配する。そのため、修理完了までに、どうしても時間がかかる。交換部品が品薄で新たに生産しなければならなかったり、調達・生産そのもののリードタイムが長かったりすると、利用者を待たせる時間はさらに増える。
タイムリーに修理・調整が施せないと、利用者の日常生活、あるいは利用者の生産計画やシステム運用に大きな不備が生じてしまう。サービスに対する満足度が低下するばかりか、場合によっては競合他社への乗り換えにもつながりかねない。
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