データのバックアップツールなどを販売するクライム(本社:群馬県前橋市)が2014年8月中にも、仮想環境に特化したバックアップツール「Veeam Backup & Replication」の最新版(v8)を発売する。ストレージ製品「NetApp」へのネイティブ対応や、EMC Data Domainの重複排除機能への対応、データのフル暗号化機能の装備などが特徴という。
バックアップツールは、仮想化ソフトベンダーのそれぞれが提供している。例えば、米VMwareの「vSphere Data Protection(VDP)」や、米マイクロソフトの「Windows Server バックアップ」である。それぞれが、vSphereやHyper-Vといった仮想化環境に対応している。そうした中で、Veeam B&Rのようなサードパーティー製ツールを使う利点は何だろうか?
クライムによると、利点の1つが、仮想環境に影響を与えにくいエージェントレスであることだ。Veeam B&Rは、仮想環境とは別のマシンで動作し、vSphereのCBT(変更ブロックトレース)機能をAPI経由で利用することで、vSphereの管轄外のストレージにバックアップが作成できる。仮想環境に影響を与えたり、バックアップ先を制限したりといった問題が、原理的に生じない。
これに対しVDPの場合、vSphereのホスト上でエージェントが動作して、バックアップを実行する。仮想環境に影響を及ぼすほか、WANを超えたバックアップができない。保存先もVMFS(仮想マシンファイルシステム)のデータストアに限定され、容量は最大2TBの制約がある。結果として、ストレージやバックアップツールが備える重複排除機能を活用しにくい問題があるという。
Veeam B&Rを稼働させるサーバーを別途構築する必要はあるものの、ISV(独立系ソフトベンダー)が開発するだけあって、かゆいところに手が届くツールになっているわけだ。
v8では、上記の他に、次のような機能強化を図っている。(1)NetApp製ストレージ対応し、vShpereを介さずアクセスすることでバックアップ性能を高めた、(2)Veeamが稼働するサーバーに EMC製のData Domain Boostをインストールすることで重複排除を高速化し、書き込み処理を約30%速めた、(3)これまで単独で実行できなかったデータの暗号化をVeeamだけでできるようにした、である。
また、マイクロソフト製品に対しては、バックアップにある仮想マシンのデータから直接、アプリケーションの特定アイテムだけを選んで復旧やコピーができるようにした。障害時の早期復旧を可能にする有用な機能である。v7からExchangeとSharePointには対応していたが、新たに、ActiveDirectoryとSQL Serverも利用可能にした。
ところでVeeamは、2006年設立の比較的若い企業。「仮想環境におけるデータ保護」に焦点を当てた専門ベンダーとして、CommVaultやSymantecなど有力企業がひしめく中、年率50%以上で成長している(関連記事)。Veeam B&Rは現時点で世界に4万社の顧客企業を持つという。
米Gartnerのバックアップソフトに関するマジッククアドラントでは、2012年までは名前がなかったが、2013年には「ニッチだがビジョナリな企業」として登場している(関連記事) 。日本ではまだ知名度が低いが、知っておくべきツールベンダーの1社といえるだろう。