ペタバイト規模のSDS(Software Defined Storage)を開発・販売する米Scality(スケーリティ)が、2014年10月末に日本事務所を開設し、日本市場に本格参入した。既に@niftyといったISP(Internet Service Provider:インターネットサービス事業者)などを顧客に持ち、日本での売上高が全世界の15%を占めるという。ISPなどサービス事業者中心に攻める同社の戦略や、SDS市場の動きなどについて、米本社CEOのJerome Lecat氏に聞いた。(聞き手は志度昌宏=IT Leaders編集部)
−−ISP(Internet Service Provider:インターネットサービス事業者)などを対象にペタバイト規模のSDS(Software Defined Storage)開発に特化している理由は。
10年後、15年後を考えれば、中堅・中小企業がストレージシステムを購入して自身で運用することはなくなり、クラウドサービスを活用していくと考えているからだ。既に米国では、そういった状況が見え始めている。これが欧州や日本でも主流になるには、あと5年ほどかかるかもしれないが、今後の方向性としては変わらないはずだ。
そのため、当社の主力製品である「Scality RING」は最初から大手の環境をターゲットにした設計になっている。例えば、企業で利用しているハードディスクドライブの数が50未満であれば、Scality RINGを使う必要は全くないだろう。そうした環境には、当社製品以外に優れたテクノロジーがある。
−−中堅・中小企業がクラウドのみで企業活動を進める状況が始まっているというが実際に可能なのか。
当社自身が、その好例だろう。2009年に設立した当社の従業員数は90人規模で、まさに中小企業だ。会社には、会計システムが動作する1台のサーバーがあるだけだ。そのサーバーも、ストレージは搭載していないし、外付けのNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)も購入していない。バックアップはすべてクラウドにある。
CRM(Customer Relationship Management)システムは、Salesforce.comとMarketing Cloudを、ドキュメント系はbox.comをそれぞれ使っている。当社は世界中に4つのオフィスを置いているが、契約書やマーケティング関連資料などはすべてネット上で共有している。ストレージを持たない1台のサーバーだけでグローバルにビジネスが展開できているわけだ。
−−大手企業のストレージ環境は、どうか。
今、大手企業のシステム環境では、様々なベンダーの色々なストレージを保有し、それらすべてを管理している。だが今後10年を考えれば、ストレージを保有するのは、大手企業のなかでも、本当に大きな環境を持つ“超大手”に限られる。当社製品を必要とするのは、全世界で1万5000社から2万社程度、日本市場なら300から400社ぐらいだと見積もっている。。
こうした超大手企業のストレージ環境は今後、米Googleや米Amazon、あるいは米Facebookといった企業と同じような形で運用されることになるはずだ。彼らは、何千という規模でハードディスクドライブを運用している。
だから当社は、ペタバイト規模のストレージ環境の構築に特化し、オブジェクトストレージのテクノロジーを使ってスケールアウトのアーキテクチャーを採用している。既存のアプリケーションを変更することなく、大規模に展開できる。
オブジェクトストレージの競合ベンダーは、アーカイブ用途に注力している。当社のテクノロジーは汎用的に利用でき、ストレージに対するワークロードの80%はカバーできる。
実際、当社顧客には、Gmailのような電子メールサービスを1億5000万人のユーザーに提供している企業や、米YouTubeと競争して約5000万人に動画を配信している米Dailymotionなどがいる。彼らのサービスを介して、全世界で約2億人が当社のストレージを使用していることになる。
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