[海外動向]

国家戦略「インターネット+」のカギを握る、中国3大ネット企業の最新動向

アリババ、テンセント、バイドゥの大手3社が目指すイノベーション

2015年3月30日(月)魯 玉芳(IT Leaders編集部)

中国国務院(日本の内閣に相当)総理の李克強氏は2015年3月5日、2015年の政府工作報告(国務院が主導する行政報告)で、「互聯網+(以下:インターネット+)」という新しい行動計画を掲げ、モバイルやビッグデータ、IoTなどを駆使した経済成長を促進する構えだ。中国のインターネット企業と言えば、アリババ、テンセント、バイドゥが思い浮かぶ。インターネット+戦略を牽引するであろう3社の最新動向を紹介する。

インターネット広告で成長を続けるバイドゥ

 バイドゥ(百度、Baidu)は、2000年に北京で創業したIT企業である。有名な検索サイト「百度」のほか、「百度百科」(ヤフージャパンの質疑応答サービス「Yahoo! 知恵袋」に相当)や「百度入力方法」(IME)などのサービスも提供している。

 米グーグルが中国当局の情報統制に反対して中国市場から撤退して以来、国内の検索サイト業界では、百度は中国市場トップの地位を誇っている。2014年第4四半期、総売上高22億6400万ドル(約2715億1700万円)、そのうち、インターネット広告の売上高は22億3100万ドル(約2675億5900万円)だった。年間アクティブ企業ユーザー数は52万3000社に達している。

クラウドとスマート自転車/無人自動車市場に参入

 バイドゥはオンラインストレージサービスも運営する。現在は、開発者向けにクラウドサービス「百度開放服務平台」(http://developer.baidu.com/)の提供を行っている。

 2014年には、スマート自転車「DuBike」の研究開発について発表を行って話題を呼んだ。DuBikeは、自転車の車体に搭載された各種センサーを用いて、周囲の環境の認識や障害物の回避を行う自動運転を実現するという。将来、バイドゥはDuBikeのOSを開発し、PaaSの形態で自転車メーカー向けに提供する予定だ。こうした自動車業界との連携は、ナビゲーションをはじめ、ヘルスケアや道路情報通知、大気汚染通知などの問題解決にあたっていく狙いがある。このスマート自転車のほか、同社は交通運輸部(日本の国土交通省に相当)公路科学研究院の協力を得て無人運転の自動車の研究を進めている。こちらは2015年に発売する予定という。

その他のIT企業の動向

 アリババに続き、EC市場シェア2位の京東(JD.com、2004年北京創業)も注目の企業だ。最大手のアリババと対抗するため、京東はテンセントと連携を行い、自社EC事業とテンセントのEC事業の再編に取り組んでいる。ほかには、中小EC企業向けクラウドサービスの提供や、コールセンターの人手不足問題を解決するためのロボット「JIMI」の開発も進めている。

 検索サイト市場でシェア2位の捜狐(SOHU、1998年北京創業)は、企業向けにクラウドサービス「捜狐雲台」(http://cs.sohu.com/)を提供している。画像データの保存や処理にに強みを持つという。

 中国版Twitterのウェイボー(微博、Weibo)が人気を集めている新浪(SINA、1998年に上海で創業)も、企業向けクラウドサービス「新浪雲」(http://www.sinacloud.com/)に力を入れている。開発者は同サービスを、ほぼ無料で利用できるようになっている。

 「Uber」や「LINEタクシー」のようなスマートフォンのタクシー/ハイヤー配車アプリケーションでは、2015年2月14日に、アリババが出資している快的打車とテンセントが出資している滴滴打車が合併してサービスの強化が図られる。タクシーの台数が需要よりきわめて少ない中国では、配車の合理化・効率化は急務の課題になっている。

*  *  *

 中国のインターネット業界は、政策上閉じられた環境、言い換えると保護された環境の下で、各社が時には競合したり、時には提携したりすることで成長を重ねてきた(図2)。技術的な面で未熟だとしても、何と言っても広大な市場だ。政府のインターネット+戦略に示された先端的なIT活用に、各社がチャレンジを重ねているうちにイノベーションが起こることを期待している。

図2:中国の主なインターネット企業の起業地域と分野
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